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「地域に根付いたおじいちゃんのやっている町のチャリンコ屋さんに」池田サイクルガレージ 池田直也

VEHICLE

2018.8.14

日々進化し続ける現代社会の中で古くから生き残り続け、今も尚愛され続けている自転車。

のんびりとした町の雰囲気によく馴染んだ自転車屋さん『池田サイクルガレージ』髭のにいちゃん池田直也。

アメリカにありそうな親しみのあるユルさがある、彼のガレージに潜入した。

やりたい店を見つけてくれた祖父

己の力でやりたい

大学の時から社会人になってもずっと、漠然と自分の店がやりたいなって思ってて。それだけで金を貯めてました。

まぁ会社の形態があんまり合わなくて、好きじゃなかったですね。

自分でお店をやれば、やるだけお金も入ってくるし、全部自分の責任だし、っていうのが良かったんで、自分の店がやりたいって気持ちでした。

親父が家業として運送業を営んでるんですけど、継ぐっていう気は全くなかったっすねぇ。あんまり好きじゃなかったのかな。どっちかというと己の力でやりたいなっていうのが強かったですね。

親父とかもあんまり継げ継げと言わないタイプだったんで、やりたいようにやって、それでいいんじゃない?って感じでした。だから全然普通に会社員やってましたし。

この人がやってきたことを潰したくない

やろうと思ったきっかけは、じいちゃんが死んだ時に思いましたね。

元々自転車をやったきっかけが、親父の代までずっと自転車の問屋をやってたんですよ。

もう親父で三代目、ひいじいちゃんの時からチャリンコのパーツをチャリ屋に卸す仕事をしてたんですけど、それで親父の代でもうけっこう長くなって個人経営のチャリ屋は閉めちゃうとこが多くなってきて。

卸し先が少なくなってきたので、じゃあもう閉めようかってなって。

でもその時に、この人がやってきたことを潰したくないって気持ちが芽生えて。それが多分一番のきっかけですね。

問屋がだめなら、パーツを安く仕入れる方法もあるし、自転車の修理をやりたいと思って。

そこから自転車屋さんを開くためにアクションを起こした感じですね。

別にいつやろうって決めていたわけじゃない

それまでは普通に大学卒業して、会社員を5年くらいやってたのかな。

店を構えるために仕事を辞めて、2年弱くらい大型スーパーのチャリ屋でバイトしながら技術を覚えてって感じで。

特にリミットを決めてた訳じゃないんですけど、2年でばっちり覚えて辞めてやろうと思って。

技術が覚えられなかったら、もう1年やってたかもしれないですし。

これだけ修理できれば大丈夫だろうってラインまでいったので、もうお店を開けるぞって感じですね。

そこから開店の準備に取り掛かるわけなんですけど、元々はじいちゃんがやっていた店の跡地なんですけど、やっぱ内装って結構かかって。

抑えるとこは抑えて。全部自分でホームセンターで、基本的には全部木を買ってきて作った感じです。

せっかく自分の店ならガレージっぽくしたいなと思って。池田サイクルだと面白くないなと思ったんで『ガレージ』ってつけました。

意思を継いで

俺がやるからお客さんも安心して

やっぱり今だからこそ町のチャリ屋みたいなのがいいかなって思ったんですよね。結局バイトで大型スーパーでやってたけど、バイトの人によって違いすぎるんですよね、出来ることが。

どうしてもバイトがいるじゃないですか、だから結局言ってることと違うっていうのがあって。入ってすぐの子が対応しちゃったりとかでよく分かっていなかったり。

修理も誰がやってるのか分からないみたいな。入ってすぐの子がもしかしてやってるのかもしれないし。そういうのを基本的に俺がやるから安心して任せてもらえる様になりたいですね。

地域に根付けるように

俺は口コミで広がるのが一番いいかなって思ってます。

お客さん同士であそこ良かったよって、紹介してもらうのが一番いいと思ってるので。

とりあえず知ってもらうためにビラを配ってる感じですね。

あとは来てくれたお客さんに120%の仕事して送り出してあげるって感じです。

そうすれば自然といい口コミは広がるのかなと思ってるので。焦らずじっくりって感じですかね。

うちは今空気入れ無料でやってるので、結構お客さんとか来て空気入れに来てくれるんですよ。

空気入れに来てくれるタイミングで、ブレーキのゴムとか、タイヤを診てあげて、「そろそろ弱って来てるよ〜」とか言って、じゃあまた来るわって感じで来てくれる。きっかけ作りとして無料でやってます。

この辺は通学路あって小学生いっぱい通るので、空気入れてあげた子とかが「こんにちは!」と言ってくれるので「おうっ!」って感じで。

それは嬉しいですね。

そうやってどんどん地域に根付けるようになればいいですね。

町のチャリンコ屋に

別にビジョンは今のところは考えてないですけど、とりあえず目標としては50年やりたいなっていうのはありますね。

じいちゃんになって、ほんとに町のチャリンコ屋になるのが俺の中で一番理想ですかね。冬とか暇なんで色々考えますけどね。

やっぱり寒い時期とかはみんなチャリ乗らないから。どうしても繁忙期・閑散期は商売なんで絶対あるので、どうしようかなみたいな感じですね。

オリジナルでTシャツとか刷ったり、サコッシュなんかも作って。

そんな考えもありますけど、基本的にはあんまり色々手を出してもしょうがないかなって思ってるので。

辞めた会社の同期よりは稼ごうかなと思ってます(笑)

辞めて結局稼げないじゃんって言われるの嫌なので。

ガレージを作り上げるおじいちゃん

走りに行くよりいじる方が好き

自分はあんまりメーカーとかそこまで気にしてなくて、中古で安いのを買ってます。

基本的にはいじるのが好きなんで、なんか1個高いのバンって買って、それをいじるっていうよりは、寄せ集めでどんどん自分のイメージしたのを組んでいくのが好きなんです。

あと作業するのに一畳あれば全然いけるんですけど、自転車整備士、整備士技師っていうのがあって、試験をほんとに畳一畳の中でそのエリアでやらなきゃならない。

工具とか出ちゃだめなんですよ。出たら減点みたいな。

近くにバイク屋のおっちゃんがいるんですけど、「バイクよりチャリのほうがよっぽど難しいわ」ってずっと言ってますからね。

でもその手の届く範囲と言うか制限された中でいじる感じも自分は好きなんでしょうね。

ポリシーって、ないかな

笑顔で帰ってもらえるのが一番良い!と思ってます。

基本的にはもらったお金よりはサービスしようかなって思ってるんで、パンク修理でも直しに来てくれたら基本的には車体も全部きれいに磨いて空気も全部入れて、油もちょっと注してっていうサービスをしてるんで。

お金もらうのって俺はけっこう責任大きいと思ってるんで。

だから、その辺はしっかりお客さんが納得してお金払ってくれるようにはしたいなと思ってて。

その上で、笑顔で帰って乗って、「あぁ」って感動して、また来てくれたらそれが一番いいかなと思ってますね。

目指すところで言うと、見積もり聞かずにでも「やっといて!」って言われる事。

それって安心感じゃないですか、あの人だったら大丈夫でしょみたいな。

お客さんとの信頼関係ができたら本当に一番ベストです。

今チャリ屋とか、その店で買わないと修理してくれないとか全然ありますよね。

だからその雰囲気は出したくないなと思って、紙とかでもネットで買ったやつでも何でも直しますよ。

ポリシーって、ないかな別に。お客さんが満足してくれるのが一番ですからね。

50年後のガレージ

熱い想いとは裏腹に彼の人柄の暖かい雰囲気のガレージ。

彼がつなぐお客さんとの信頼関係は、彼の髭が真っ白になってもつながり続け、地域に愛される自転車屋さんとしていつまでもこの町に根づいていくことだろう。

INFORMATION

池田サイクルガレージOfficial website