daisuke miyataniは丁寧な人だ。
コーヒー焙煎士・バリスタでありながら、ミュージシャンという別の顔を持つ。
daisuke miyataniとしてまるで空気のように耳に溶け込む音楽を奏で、『+COFFEE』として優しく喉を通る浅煎りのコーヒーを作り出す。
彼が醸し出す空気感は、丁寧な日常がよく似合う。
+COFFEEをはじめたワケ
コーヒーは元々全然好きじゃなかった
もともとコーヒー全然好きじゃないんですよ。苦いの嫌いで。
ただカフェには興味があって。
飲食店というよりは、場所として。昔でいうサロンみたいな。人が集まって繋がる場所としてのカフェに興味があったんです。
ある時『お店を続けるという事』みたいなテーマのトークイベントに申し込んで、たまたま友達と二人で行ったんです。
その時にロースターの方が焙煎してるコーヒーを、小さいカップで入場者全員に配ってたんですね。
「コーヒー好きじゃないけど、小さいしまあいいか」ぐらいの気持ちで飲んだんです。そしたら、今まで自分が思ってた、ただ苦い汁みたいなコーヒーとは違ってたんですよ。
これはなんか、「このままでも飲めなくはないな。美味しいかも!」と思って、終わってからもずっと気になってたんです。
そこからですね。だんだんコーヒーが気になってきた。
だんだん他の人にも飲んでほしくなるんです
あのコーヒー美味しかったなって思って、あの時の豆でも買って見ようかなと、ネットで買ってみたりして。
器具も持ってないし何もわからないので、本読んで調べて器具を買って自分で淹れてみたりしたんですけど。記憶が曖昧だし、今まで好きじゃなかったものなので、淹れ方があってるかこの味が正解なのかもよくわからなくて。
でもだんだん他の人にも飲んでほしくなるんですよね。
家でギター弾いて最高!じゃなくて、外でライブしたいなみたいなのあるじゃないですか。そういうのに近い感じで、外でもっとコーヒー入れたいなと言う気持ちになってきました。
どこかのコーヒー店で働きたいっていうよりは、自分の淹れたコーヒーをもっと飲んでもらう機会が増えたらみたいな思いがあって、周囲に「コーヒー淹れます」と言ってたんです。
全然やり方もわからないし、ツテもないし、そういうイベントの存在もよく知らなかったんで、ずっと言うだけ言ってたんですよ。
そしたらたまたま、マルシェみたいな場所に呼んでいただいて、そこで初めて自分が選んできた豆、自分で淹れたコーヒーを出した時「美味しい」っていう言葉をいただいて。
その後も呼んでいただいて、お客さんが多い時なんかは延々淹れ続ける時間帯があるんですけど、大変っていうよりは楽しかったんです。
淹れ続けてるのが楽しい。
苦じゃない、楽しいっていう感じ。
それで、「ああこれが仕事だったらいいのにな」って思って。
店舗を持たないコーヒー屋さん
今、『+COFFEE』ではコーヒーの焙煎と豆の販売やお店に卸したりしてます。あとはイベント出店、ケータリング、レシピを提供したり。
時々はイベントを企画したりもします。コーヒーと音楽のコラボ、みたいなイベントですね。焙煎機は手回しの小さいやつ。
普通にカフェ飲食店でやることもあるんですけど、本屋さんとかギャラリーだったりとか、場所は色々ですね。
「できるだけ色んな場所でコーヒーと出会う」みたいなのを大切にしてて。ポップアップストアみたいな感じでやることもありますね。
ほんとに色んな場所でコーヒー淹れてます。そういうの、なかなか他でやってないから結構ニーズはあるみたい。
どんなシーンでも、どんな気分でも
色んな働き方があってもいいんじゃないか
+COFFEEは自分にできることから小さな仕事を作るという考えでスタートしているので。
大金を借りて店舗を持つとかじゃなくて、無理なく継続していけるかたちでやるって感じですね。多少は規模を大きくしていかないといけないですけど。
ここ数年で店舗の使ってない時間帯を間借りしてコーヒー屋さんをする人とかかなり増えて来ましたね。
僕も同じような文脈で話されることがあるんですが。
でもちょっと違うんですよね。
間借り営業っていつか店舗を持つ準備みたいな感じでやってる人が多くて。
僕の場合は店舗を持つことを目指していなくて、必ずしも店舗がないといけないわけではなくていろんなやり方、働き方があってもいいんじゃないかと思ってこのスタイルになりました。
『+COFFEE』自体が場所を限定しない考え方ですしね。
違うものと合わせることで、その時間がもっと良くなる
コーヒーって、どういうシーンでもそこに居て大丈夫な気がしたんですよ。
楽しい時でもいいし、ちょっと落ち込んでる時でも、コーヒーがあるといいし。もうちょっと仕事頑張ろうかなみたいな時でも、コーヒーだし。
どういうシーンでも、コーヒー。どういうシーンにも『+COFFEE』。
コーヒーがあることで、その時間がちょっとよくなるみたいな。場所もそうだし、違うものと合わせることで、その時間がもっと良くなるとか。
そういう感じのコンセプトでやってます。
コーヒーと音楽
音楽とコーヒーがちゃんと繋がっている
去年の事なんですけど、『+COFFEE』のインスタで興味を持ってくれたカフェの人がいて、普通にお試しで豆をオンラインショップから注文してくれたんですよ。
オンラインショップには音楽とセットのメニューがあって、ダウンロードコードとコーヒー豆のセット。それを買ってくれたんです。
メッセージもくれて、ちょっとやり取りしてたんですけど。
そしたら「miyataniさんって、『diario』っていうアルバムとか出してるmiyataniさんですか?」ってメッセージが来たんですよ。
「あ、出してます」
「え、お店で時々流してます」
知らずに、豆の注文してきたんですよ。びっくりしますよね。10年前ぐらいのアルバムなんですよ。
そこから、お店でも豆使ってくれたりとか。同じレーベルの友達がライブして僕がコーヒーを淹れるみたいなイベントも開催したり。そこから仲良くしてもらってるんですけど。
ちょっと、運命的なものを感じちゃいますね。
10年前のアルバムを再発するんです
たまたま出演した音楽イベントの協賛にNGO法人が入っていたんですが。
+COFFEEでやっていた『LETTER+COFFEE』というコーヒーを飲みながら手紙を書くメニューを知ってくださって、NGOで毎年行なっている世界人権Dayに手紙を書くイベントで『LETTER+COFFEE』のお誘いをいただいたんです。
音楽関係からコーヒーにも繋がってるなと感じました。
運よく、10年前のアルバムを再発しませんかというお話いただいて、今年リリースすることになったんですよ。『diario』というタイトルで、2018年5月25日にリリースしました。
リマスタリングして、追加の曲入れて、当時とは違うレーベルから出るんですよ。
既に廃盤になってたんですけど、レーベルの方が気に入ってくれてて、「思い入れのある作品だし、廃盤でもう手に入らないのはもったいない、うちから出しませんか」って言ってくれて。
すごい向き合って聞くというよりは、普通の生活の中で流してほしい感じです。
音楽流しときたいけど、よくある音楽だと主張が強すぎて、でも無音は嫌だなあみたいな人が、ちょうどいいねとよく流してくれるんです。
生活に寄り添う的な、なんか普通の生活のなかで、なんとなく流れて。風のような感じで流れているみたいな。身の回りの音と演奏を合わせたりとかしてますね。
野望はないですね。コーヒーを飲んでもらいたい
これから先は単純にもっとたくさんの人に飲んでもらえたらいいなと思います。
野望はないですね。コーヒーを飲んでもらいたい。
あまり、ライフスタイル的なものは変えずに、コーヒーでちゃんとやっていくっていう感じです。
他に何かスタートしても、コーヒーの比重を増やしていきたいですね。
大きいコラボとか、いいですね。
ライフスタイリストdaisuke miyatani
柔らかな時間を感じながら、たくさんの話を聞いた。
daisuke miyataniを纏う空気がそうさせているのか。気負わず、マイペースに生きていくことの大切さを感じさせてくれるような。
丁寧な日常を創り出す先駆者で、誰よりも自然体なライフスタイリスト。それがdaisuke miyataniである。
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