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水産業界のアナーキスト森田釣竿 魚とともに生きる男の次世代に伝えたい想い

SPECIAL

2018.12.4

ステージ上で「魚食え」と叫び、鮪を捌く。

他に類を見ない圧倒的なパフォーマンスで知られるフィッシュロックバンド『漁港(正式表記は反転した港)』のフロントマン、森田釣竿。

打首獄門同好会からも強いリスペクトを受け、さかなクンとも親交が深いという彼の日常を知るために、ホームグラウンドである日曜の浦安魚市場へ向かった。

時にお客さんと会話しながら、時に魚を捌きながら、魚屋としての日常が垣間見えるインタビューとなった。

魚屋としての使命感

Photo by ossie

昔ながらのスタイルにこだわりたいっていうか、逆行したい

時代に逆らっているんです。

昔ながらのスタイルにこだわりたいっていうか、逆行したいっすよね。意地でもね。昔みたいに魚屋さんで魚を買う。悩んで、美味しい食べ方とか、旬の食材は何かとか、お店の人と会話しながら、買って帰ってもらうっていう。魚屋とか八百屋とか専門店っていうのは、そうやって説明してあげるためにいたわけ。

やっぱ人なんですよ。対人間。俺そこは信じてるんで。

パソコンでやり取りするよりも、顔合わせて会話して、「こう食べたら美味しいよ」って言う。それを持ち帰って食べる方が絶対美味しいと思うんだよね。会話して買った魚の方が。だって相手、人なんだもん。いつも言うんだけど、ライブと魚屋ってなにか違いますかって、全く同じだと思う。しゃべって動く。

店は舞台、ステージだから。魚を売るときは「いらっしゃい」って声かけてる。それをそのままライブハウスでやるだけ。「漁港」っていうバンド自体は、魚を売ることが目的で始めてる。

だから同じなんですよ。魚を食べてもらいたいっていう、その思いでやってるから店もバンドも、どっちも同じ。

魚のために仕事してるの、俺たちは

浦安魚市場で「泉銀」って言う魚屋をやってます。65年目。65年やってるんだよ。おじいちゃんが作ったお店で。親父が代継いで、次俺になった。今は、日曜日は浦安魚市場、それ以外は浦安の堀江の店でやってます。魚屋ってお客さんに媚びなくていいでしょう。「まけてくれ」っていわれてもふざけんなと。他で買えって言える職業だと思うのね。

なんでかって言うと真剣に魚と向き合っているから。喋れない魚の分も俺たちが代弁していかないといけないわけでしょ。

魚のために仕事してるの、俺たちは。

わかってない人間が来るとね、魚が乗り移って、帰してしまえって。俺ね、魚屋ってそういう仕事だと思う。嘘ついちゃいけない仕事だと思うんだよ。

媚びなくていいと思う、本当に。親が、魚屋っていうのは継いだら大変だから、魚屋だけにはなるなって言うわけですよ。俺たちの食生活は、便利で豊かと言われる仕組みができた時点で変わっちゃった、浦安で言えばディ〇ニーランドが出来た時に変わっちゃたの。

もともと普通の美味しいおにぎり食べてたんですよ。口溶け良く風味豊かな江戸前の海苔に、鰹節削り器で、自分で削った鰹節の具が入ったおにぎり。そんな贅沢なものを俺たちは食べてた。

でもコンビニが便利なパックのおにぎりを出したら、みんなそっちに飛びついちゃって。散々自分たちが美味しいおにぎり食べてたくせに、新しいものに持って行かれちゃったわけですよね。大人達が心を。

寂しくない?それ。

昭和の不便だったけどある意味豊かだった頃と、平成の新しい便利な良さの、両方を知ってるのは俺たち40代が最後だと思う。

昭和の良かったころもちゃんと伝えていけるようになりたいっていう想いもあるから、魚屋を継ぐべきだと思った。

使命感的なのはあるね。魚屋っていう商売で、お金ですごい苦労していた大人達を見て育ったからね。だから明るい仕事にしたい俺の代で。

水産業界の伝統芸能

民謡とか軍歌、演歌がルーツ

元々のルーツは、民謡とか軍歌、演歌だった。

じいさんばあさんの歌をよく聴いていた。それとかを手拍子で歌ってたんだよ。そう言うのずっと聞いてたから好きになっちゃった。

軍歌も良く聞いてたから、本当に軍人になりたいと思って、小学校の時に。

周りに合わせてクラスではおニャン子クラブが好きなふりしてたけど、ウチではガチガチの軍歌歌ってた(笑)。

そういう子が中学生になって、バンドブームが来て。パンクっていうのに触れるわけですよ。

で、軍歌歌ってた子が、今度はパンク聴いて一気に左になっちゃった。

男だと聞いた事があると思うんだけど、左側のキンタマがね、すごい沈んでるやつはオナニーしすぎだっていう話があって。右に寄ってたキンタマが、パンク聴いたら今度は左に寄りすぎちゃった、みたいな(笑)。

ちなみに今の俺のキンタマは、左右均等に垂れてます(笑)

シド・ヴィシャスがお客さんをベースでぶん殴ってる映像があるじゃん。あれ見てコレなら俺でもできると思ったんだよね。

そっから、ディスチャージとかハードコアにどんどんハマってったんだよね。

唯一無二のジャンル『フィッシュロック』

魚っていろんな種類あるよね。

日本海と太平洋じゃ全然とれる魚が違うし、同じ魚でも味が違う。環境によって全然違うじ ゃん。

北半球でとれるクロマグロ、南半球でとれるミナミマグロ。マグロも全然違うからね。あと同じ魚でも調理方法で、味や食感が変わったりするしね。

それと同じように漁港の曲も多種多様。それがフィッシュロック。18年間ずっと言ってるからね。唯一無二のジャンル。

打首獄門同好会の 『島国DNA』 っていう魚食をフィーチャーした曲があるんだけど、「漁港には筋通さないと」って打首さんの会長から連絡があったんだよね。

打首さんのいわゆる「日本の日常を歌う」って言うところと、漁港のフィッシュロックに、なにか通じるものがあるって思ってくれたのか、「魚を取り上げるなら森田さんに筋通さないと」っていう感じなのかな。

そんな流れで、打首さんの『島国DNA』のMVにも出させてもらって。漁港のライブにも来てくれたりするし、有難いよね。

紅白目指してるからね

パフォーマンス的なものは18年間全く変わってないです。ほぼ同じ。漁港って最初からもう出来上がっちゃってるの。魚の歌を歌って、最後鮪さばくだけでもういいんですよ。後はもうどうでもいい。

俺が言いたいことは「魚を食べよう」と。ただそれだけ。

すごい売れてるバンドじゃないのになんで18年間続くのかって、多分そこだと思うんですよね。漁港見て魚食べたいなとか思う人がいると思うんだよ。だから呼ばれちゃうと思うの。だからやめられないっていうかね。

紅白目指してるからね。絶対出ますよ紅白。

一人でも多くの人に魚を食べてもらうためには、やらないといけないんだよ。発言力持たないとだめだから、もっと有名になって頑張らないとなとは思ってるよ。バンドとしても、魚屋としても。水産業界の染之助染太郎さんみたいな。そういう存在になりたい。

魚食を広めるためにできることを

Photo by ossie

唯一のホーム『海洋大学』

俺たちね、どこ行ってもアウェーなんだよ。

例えばね、ロックフェスかなんかで、みんな音楽を聴きに来てるのに、魚食えって出たってね。いきなりこんなおやじが出てきて 「てめぇ魚食え!」 って脅かしてね。わけわかんない曲やって、最後鮪さばいて、帰っていく。

そんなバンド、どこ行ったってアウェーなんだよ。

祭りもよく呼ばれるの。祭りなんかみんな遊びに来てるだけなんだから、そこでいきなりこんな水産業界のアナーキストみたいな、無政府主義者みたいなそういう人間が、祭りで 本気で包丁振り回して出てきて「おらぁ魚食え」っつったってわけわかんないと思う。

である時、海洋大学でライブをやったんです。さかなクンが大トリだった。さかなクン、さかな芸人ハットリ、漁港の三つ巴。

海洋大学だけは、ホームになっちゃうんですよね。

すごいね、海洋大。受け入れちゃうんですよ。漁港を。

それが非常にやりづらいっていうか、受け入れられることに慣れてないから。

さかなクンファンも見てるんだけど、俺さかなクンと全然違うじゃない。だから、さかなクンファンはきっと引いて見てる(笑)。

でも海洋大学ではそれも含めて受け入れちゃってる。だから海洋大学だけは、ホームなんですよ、完全に。

「魚食え!コノヤロー!!!」

 

7月にリリースしたシングルのテーマは 『魚食えコノヤロー』。

魚食えコノヤローって必ず入っているんですよ、曲に。5曲入りです。

レコード屋さんでは買えないです。自分で売る。それがパンク精神だから。

漁港のWebsite または BASE で買えます。

それか泉銀店頭。浦安魚市場と堀江店の店頭で。魚もCDも買える。不思議な店。

会えるアイドルのパイオニアだと思ってる。今でも会える。会える魚屋。当たり前だけど(笑)。

会いに来て、魚買って、CD 買ってほしいよね。

音楽業界のバショウカジキ

音楽も、食もすごく身近なものじゃないといけないと思うんですよ。食もそう。もっと身近なものじゃないといけない。みんな疎かになっちゃったでしょ。食べることに対して。俺たちの音楽を聴いて食生活正すとか、例えば家で頑張って魚焼いてみようかなとか。魚三枚おろしやってみようかなとか思えるところまで持っていきたい。

いろんなバンドやミュージシャンが、いろんなこと歌うけど、俺が歌いたいことは同じ「魚食えコノヤロー」。

あとね、音楽もそうだけど、仕事って楽しくないと自分がまず続かないし、お客さんにバレちゃうんだよ。コイツ手抜いて仕事してるなとか。

生き生きしてない魚屋で魚買いたくないでしょ。元気のないバンドなんか見たくないでしょ。お客さんは鮮度=元気を欲してるんだよ。

漁港って発明だと思うんですよね。自分がやっている仕事をそのまま本当に音楽にしちゃうっていう。

例えば俺がバンド「漁港」をやってるのに、鉄道会社に勤めてたりしたらおかしいでしょう。コンビニの店員さんで、漁港ってやってて 「魚食え!」 って ステージで叫んでもリアリティがないじゃない?

だから俺は自分の生の声そのまま届けたい。ライブハウスでも。

ガチだから俺。

早すぎちゃってさ。誰も早すぎちゃってついてこれない、俺たちに。

バショウカジキ。音楽業界のバショウカジキって呼んでくれ。

(※バショウカジキの詳細についてはこちらを参照してください。)

バショウカジキが一番速いんですよ。

誰も俺のスピードについてこれない。ついて来なさすぎて、俺たちの情報が届かない(笑)。速すぎて悪かったな。

今年の目標は、マンボウになるぜ。みんなに見てもらえるように。簡単に捕まっちゃうからマンボウ。それ目指すね。

魚屋としての未来

Photo by ossie

26頭までとっていいっていう。ツチクジラっていう鯨。

魚屋的におすすめなのは、鯨でしょ。魚じゃないけど(笑)ツチクジラ。

意外と知られてないんだけど、沿岸捕鯨基地が関東では唯一千葉県の南房総にあるわけです。

食べ方は刺身よし。焼いてよし。揚げてよし。煮てよし。何やってもうまい。

焼くならステーキソースでいいんだよね。

刺身で食べるなら、醤油に、ごま油に塩入れて、レバ刺しダレ。それで食べる。サイコー!!!!!

食べた事が無い人は1回食べてみて!ツチクジラ最高!

日本捕鯨協会Website
日本捕鯨協会 ゆるきゃら バレニンちゃん Twitter

先人たちの想いや命を次世代につなげたい

一昨年水産庁の「お魚かたりべ」に任命されたんだよね。

いろんな意味で沢山の人達に魚の食べ方を伝えていきたく て。

任命していただいたっていうのは自信にもなったし、あと励みになるね。これからのね。もっとちゃんとやんないとなっ て。

同時にもっとふざけてやろうと思ってるけどね、逆に。本当に伝えたいことって、真面目に話すだけじゃダメなんですよ、人って。

もともと日本自体が海洋国家で、海に囲まれているわけですよ。その大事な動物性タンパク質を海の生き物から摂取して、自分達の先祖っていうのは命をつないできたし、食文化も繋いできたわけ。毒見した人間が何人死んでるかわからない。今まで。

そういった中でこういう魚はこう食べると美味しいとか、繋いでくれた命だとか、食の文化だとかを今途絶えさせるわけにはいかないわけですよ、ここで。

そのためにもみんなで一丸になって、先人たちの想いだとか命だとかを大切に次世代につなげていけたらいいかなと思ってる。

ただ、ふざけてるだけじゃクレイジーな魚屋になっちゃうから。

Photo by ossie

魚食の未来のために

浦安魚市場での森田釣竿は、明るく接客しながらも、真摯に魚に向き合う姿がとても印象的だった。魚食のこれからの道程はきっと厳しいものであろう。しかし、森田釣竿の存在は、日本の水産業界に光を灯すものになるのではないか。

『水産業界のアナーキスト』は自分だけにしかできないやり方で、今日も、そしてこれからも魚のために働き続けるのだ。

※残念なことに来年2019年3月末 浦安魚市場の閉場が決定した。現在泉銀は、毎週日曜日・浦安魚市場で営業をしている。ぜひ閉場する前に、その雄姿を観に行ってほしい。火~土は堀江店にて営業中。堀江店の営業時間や営業日については、森田氏のTwitterで詳細はご確認頂きたい。

INFORMATION

漁港 Official Site

森田釣竿 航海日誌2

森田釣竿 Twitter

浦安魚市場

泉銀・堀江店紹介記事

 

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