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刺青に人生を捧げた男 彫鼬

ART

2018.10.24

神奈川県小田原の二ノ宮という町に一人の彫り師がいる。名は彫鼬(ほりゆう)。異彩なオーラを放ち、自身の身体には色とりどりな世界が広がっている。

なぜ彫り師という道を選んだのか、その生い立ち、彼にしか見えない・感じない世界、価値観を知れば納得がいく。

今後の展望について語ってもらいながら、彫鼬氏の内側について紐解いていこう。

この身を捧げて辿り着いた彫り師という職業

自分の興味は学校には無かった

中学の時は、ほとんど学校に行かずに研究に没頭してたね。

子どもの頃から解剖学や物理学、歴史とか、なんか色々興味があって、学校で教わることには全然興味がなかった。その時点では「刺青を彫る人」か「お化けを作る人」のどっちかになろうと決めてたの。

人をびっくりさせるのが好きでさ。「驚くこと」ってあらゆる可能性を秘めていると思うんだよ。刺青は身近な人がいれてて「肌に絵が描いてあるって超カッコいい」って思ってたなぁ。だから考えて彫り師になったとかじゃない。ただ単にインパクトが凄かったから、吸い寄せられてたんだよな。

学校出たんだけど、当時の俺は眉毛無くてモヒカンだったからどこ行ってもバイトできなくて、土方しながら特殊メイクの仕事を始めた。

ちょうどバブルで結構な予算を割いて作れたから、色々と経験させてもらったよ。特殊メイクに刺青に音楽。音楽は自分で演奏して曲作って、各所にデモテープを渡してたりしたな。

“一番好きなもの以外を全部捨ててみた”

そんなこんなで30歳ぐらいの時にふと周りを見たら、それなりに1つのことに没頭してた連中が一廉のものになってきててさ……。でも自分は、何も出来てないじゃんかって思って、それで無駄な時間を全部封印したんだ。楽器も触らない、粘土もいじらない、DJもやらない。

「もう刺青しか彫らない」って決めた。

10年間はほんとうに土下座して描いて、土下座のまま寝落ちするという生活だよ。

よく「なんで刺青師になったのか」って質問を受けるんだけど、そんなの単純だよ。好きだから。音楽とか粘土とか色々好きなことあるけど、1番頭が上がらないのが刺青なんだよね。

刺青と向き合って見えた彫り師としての新しい世界

刺青って歴史でありアート。学ぶものが腐るほどある

刺青って世間的には「身体装飾」って言われてるのね。ファッションとかアンダーグラウンド文化の一環って。でも違うんだよ。刺青自体がファッション化したのは江戸時代とか明治時代とか、わりと最近の話。

文化人類学とか考古学の話でいうと1万5000年ぐらい前から人間は刺青入れてんだよ。

家を建てたり、文字を書いたりする以前から刺青ってあるわけ。だから色んなものを含んでくるよな。医療だったり、シャーマニズムだったり、刺青ってそういう側面もある。

心霊治療とか近代科学では否定されてる側面はあるんだけど、刺青を彫るって行為でしか次にいけないっていう人生のターニングでもある。女装も一緒だよな。自然発生で生まれてきちゃうんだよね。

1万5000年やってきてることを取り締まるというか禁止する正当な理由はないよな。

“「一対一」「リアル」「嘘がない」それが刺青”

特殊メイクや映像、音楽はある程度は人との関わりで生まれるじゃん。刺青もそう。理想的なのは自己完結ではなく二人の間で完結する作品が欲しいんだよ。

すごく、リアルだと思う。一対一っていうのは。

表現ってさ、自分発信から不特定多数に向けられるものでしょ。だから、瓶に手紙を入れて海に流すようなもんじゃん。誰が拾うかわからない。そう考えたら、一番手応えがあるコミュニケーションが、一人から一人に手渡すこと。そこに、全力を尽くせるってことが一番リアルだったわけ。

いっぺんに100人全員にアクセスしようと思ったら、やっぱり無理じゃん。自分にとっては、1番嘘がないコミュニケーションって刺青だったんだよ。

相手を裸にするわけだから、こっちも丸裸にならないといけない。そういう姿勢でやってきた。

彫り師としてのこれからと、また別の新しいこれから


こだわりはね、オンリーワン。

一度やったことは二度とやらないってのが敬意だと思ってる。ちょっと疲れてくるとさ、いっぱい引き出しにストックしてる一度やったことを、使いまわしちゃえって絶対思っちゃうでしょう?

でも、それを絶対厳禁にしてると追い込まれる。毎回ネタも尽きるしさ。龍なんてもう何百回彫ってる?って話だから。

でもそれで、追い詰められてくると、その人の本当の願いが見えてくる。

それに沿って彫っていくとオンリーワンの物になるんだ。

それまでは、自分の持ってる手持ちの駒を組み合わせて、なんとかやろうっていうずるさもあるんだよ。でもある程度そういう手を自分で潰していって、純粋に向き合うと、だんだん自分でも絵をコントロールしきれなくなってくるのね。

コントロールできないけど描くじゃん。そうしたら100%が150とか160%になる。引き出しを使って保険かけてると90%以下にしかならない。だから非常に疲れるんだよ。

常にこれ忘れたら一線からはずれるだろうなと思ってるのは「誠意」と「向上心」と「好奇心」。この3つと「新しい物を取り入れる姿勢」は忘れないようにしないと。

一番大事にしていることは後悔させないこと

一番大事にしていることは後悔させないことだね。

一生後悔させない。お客さんと事前にスケッチにイメージとか描きながらディスカッションしていったり、そこまでしなくても長い付き合いとかなら話しているだけでも求めているものがわかったりもする。

刺青やお客さんに対してはそういう気持ちで今後もやっていくよ。

いろんなチャンネルがあったほうが仕事の幅も広がるなって思って、最近は音楽や造形、映像も解禁したんだ。野望は「自分の人生でまっとうできるところをきちんとまっとうしたい」ってことだから。

「思いつきは降りてきてすぐ実行」「技術は長く時間をかけて培う」

この2つを仕事のモットーにしてる。

興味のあることはとことんやりたいの

彫り師だけでなく、音楽や造形など幅広い分野にアンテナを張り、自身の興味があることに対してまずはやってみるという姿勢の彫鼬氏。「自分の知らないものを知りたい、見たい」という好奇心が彼を突き動かす原動力なのだろう。

一見とてもクールに見えるのだが彼の中には確実に好奇心旺盛な少年の心があった。どこか遠く、見えないものを見ているような、それを今、自分に表現できないかと模索しているようにも感じられた。

彫り師として、また音楽や造形など、彫鼬氏が表現し、この世に生み出す様々な作品にこれからも注目していきたい。

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