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「本場のアメリカンを」Fatz’s The San Franciscanを営む2人の経営者 レヴィン氏・浅賀氏

FOOD&DRINK

2019.6.12

日本の高円寺でハンバーガー店を営んでいたレヴィン氏が吉祥寺に移転。

オーナー レヴィン氏の元で、当時お客さんであった浅賀氏がレヴィン氏の右腕となり、料理を学ぶことで彼らの料理人人生が動き出した。

Fatz’s The San Franciscan。夢は吉祥寺のトップになること。

そんな彼らのこだわり抜いたアメリカンへの思いを語ってもらった。

全てのはじまり

出会いはお客さんから

レヴィン:僕の生まれは日本なんですけど、5〜10歳までサンフランシスコで過ごしてたんです。それから日本に帰ってきて、大学はサンフランシスコに行ってたのでそこからまた20〜23歳ぐらいの間またあっちに。24歳とかで日本に帰ってきて、いろいろやってたんです。ライブハウスのブッキングとか通訳とか。

会社勤めもしてたんですけど、自分がいざ結婚するってなった時に当時の仕事がそんなお金になってないから変えなきゃいけないって思ったんですよね。それで辞めるなら昔から思ってた自分の会社というかお店をやろうっていうのが全てのはじまりかな。

それで高円寺にハンバーガーショップを開いたんです。

お店も最初はほとんど自分1人でやってたんですけど、お客さんが徐々に増えてきた頃からさすがに1人じゃ手が回らなくなってバイトさんとかも雇い始めて2、3年経った頃、浅賀さんがお客様として来てくれたんです。そこから。

浅賀:そうですね。僕その頃高円寺住んでたんですけど、昔からハンバーガーが好きだったのでここにもちょこちょこ食べ来てて、仲良くなったんです。そしたらレヴィンから「誰か周りでバイト探してる子いない?」って声かけられて、僕でいいなら手伝うよって話をしたら即採用。

レヴィン:そうだったね。(笑)

浅賀:ここ定休日が1週間に1日しかないんですけど、僕が入って1年後くらいにレヴィンが休みをもう1日増やしたいって話が出て、でも元からある定休日を増やすわけにはいかないから、レヴィンが休むことになる日にレヴィンの代わりに店を回す感じでやってくれないかってことになって。それが最初のきっかけですね、2人で店やるっていうのことの。今は社員で、レヴィンの2番手みたいな形でやってます。

でも僕、当時アルバイトで1年くらい働いてたけど、ハンバーガー作るのとか全然やってなかったのでめちゃくちゃ練習しました。作ることに関しては未経験だったので。まず1ヶ月自分自身で特訓して、その次はレヴィンの横で、その次は1人で試しにって徐々にスキルを上げていったような感じです。

レヴィン:ちょうどその頃かな。テレビの取材が来たんですよ。それから店がやっと軌道に乗ったというか。メニューも見直したりして。
でも一見さんだけだったら意味がない。だから次に繋げられるようなものを提供するプレッシャーはありましたね。それでもやっぱり自分の料理を食べてくれる人が増えたことが嬉しかったし、やり甲斐がありました。

店舗移動のきっかけ

レヴィン:高円寺の方のお店が規模的にあんまり広くなくて、やっぱり何やるにも少し限界な感じだったんです。

やりたいことはいくつもあったんですけどできないことが続いて、もう少し広いところに移動したいなって考え始めました。

そもそも僕の地元が吉祥寺で、店を立ち上げた時にいずれ吉祥寺で何かやりたいとは思っていたのでいい機会かなと。意を決して吉祥寺に出しました。

浅賀:それに高円寺でやってた頃はテレビに出たこともあって”ハンバーガーと言ったらうちの店”って感じで、ある程度浸透できたから自分たち的にはやりきったって感覚ですね。

レヴィン:ただ、吉祥寺の今の店を高円寺みたいにするって思うとすごく大変なんだろうなと思います。それこそテレビとか、メディアに露出して1回でも飛び抜けないと、認めてもらわないとやっていけないのかもとは思いますね。

毎日来てくれるってよりかは、バーガーとかって週に何度も食べるものじゃないので月1とか間隔空くお客さんがほとんどなんですよ。
吉祥寺自体あんまり来ないとか、ここも駅近ではないのでわざわざうちのお店を狙ってきてくれるような人が多いんですよね。

そういうお客さんをどんどん増やしていきたいんですけど、ネームバリューもほぼないようなものなので美味しいよっていうのがなかなか広まらない。

浅賀:あとうちの横にヴィレヴァンのハンバーガー屋があるんですよ。

レヴィン:最大のライバルです。負けねぇって気持ちで常にやってますね。

自分たちの思いとは裏腹な現実

うちはファミレスなんです

レヴィン:うちの今の店はコンセプト的にいうと、ファミレスなんですよ。
高円寺の時はハンバーガー屋だったし外装的にもハンバーガー屋だと思われがちなんですけど、実際のところはアメリカのファミレスだと思って欲しいです。

ファミレスってやっぱりいっぱいメニューがあるじゃないですか。今日本で全国展開されてるアメリカンなファミレスも最初はメニューの数が結構えげつなかったんですよ。

今はもうそういうのないんですけど、それを今食えたら最高じゃない?って思ったんです。「アメリカの7、80年代のメニューって美味い」みたいな感じでやれないかなって思って。

浅賀:店を本場のアメリカンレストランにしていきたいんですよ。夜はバーみたいな感じで飲めたりして。それも結構安いんですよ。お会計打った時に僕らもびっくりしちゃうような金額で飲めたりするんで。(笑) お客さんもびっくりしたりしますね。

おつまみが2〜300円とか。結構飲み食いしても大体1人2500くらいかな。安く設定しすぎたかなってところはあるんですけど、でもお客さんが気持ち良くなってくれることが1番なのでなんとか頑張ってます。

レヴィン:ただね、お店自体にメニューはたくさん用意しときたいんですけど、ハンバーガーに関してはこんなに種類いらないと思ってるんです。結構うちハンバーガーの種類多いんですけど。なんなら1種類でもいいかなってくらい。

でもやっぱりニーズ的にはハンバーガーが人気なのでお客さんが喜んでくれたらいいなって思いでハンバーガーのメニューも今は増やしてますね。

レヴィン:2人とも新しいもの考えるのが好きなので、結構すぐ新メニューのアイデアとか浮かぶんですけど、やっぱりすぐやめちゃったみたいなのもその分あります。

タイ風バーガー。アジアンテイストのものですね。焼肉バーガーとか。コチュジャンマヨでソース作ったりして、美味しいんですよ。味は間違い無いんですけど-

浅賀:売れない。インド風のラムバーガーとかもやりました。アボカドとかね。本当美味しいんですよ。でも売れないんです。こういうアメリカンなところに来てわざわざ食べるかって言ったら食べないんですよね。

レヴィン:ここにきたらね、やっぱりこの王道を行っちゃうんですよね。この王道のバーガーも自信を持って作ったので嬉しいんですけど、他でも繋ぎ留めておきたいって思っちゃうじゃないですか。

浅賀:だから本当試行錯誤ですね。

レヴィン:お酒はね、カルフォルニアのワインとか揃えてるんですよ。インポーターの方にお任せして。だから間違いないんです。

ビールも飲み比べとかしてて、3種類で1600円。王道から、ちょっとフルーティーな感じのマンゴービールっていう変り種まであります。

浅賀:バドワイザーも500円だし。肉のサイズも2つあって。113gと226g。単2倍になるっていうアメリカンな感じ。

僕たち的にはアメリカンドリームみたいな気取らないパスタとか、タコスとか、12時間くらいかけて作ってるものもあったりするのでそれも推していきたいんですけど、やっぱりこの店の感じだとハンバーガーが1番わかりやすいんですよね。

なのでそこはちょっと悔しい思いがあります。自分たちで言うのも難だけど、うちのバーガー美味いんですよ。でもそれに引けを取らない料理もたくさんあるので。

レヴィン:めげずに推していきたいですね。新メニュー作るのも楽しいですし。でもやっぱりどんなメニューも試行錯誤して美味しいと自信を持って提供しているので食べて欲しいですね。どうにか届かせたいなと思っています。

こだわり

浅賀:アメリカの料理に関しては、ちゃんとレヴィンの軸があって。何よりもこだわって作っているので他の店見てるとどうもやりきれない気持ちになります。よく、日本人が食べやすいようにアレンジされたものあるじゃないですか。

そういうの見てると、なんとも言えない気持ちになりますね。僕たちは一応ブレないようにやっていて、見た目とかは日本的な綺麗なものにしてますけど、アメリカの料理をアメリカ流で出すっていうことにこだわっているのでトルティーヤ1つにしてもちゃんと自家製で作ってますし。

レヴィン:ハンバーガー屋でもアメリカ料理とかでも、やっぱり日本のお客様の口に合うようにとかよく書いてあるんすよ。それただの逃げ道っていうか。そうなってくるともう日本料理な気がしちゃうんですよね。本物じゃない。

浅賀:それ見て日本人のことナメてんだろって思っちゃうんすよ。(笑)
お子様セットにしましたみたいな感じがして。

レヴィン:うちはタコスも結構辛くて、びっくりする方もいるんですけど、そういうものなんですよ本来のタコスは。だから辛いものは辛くして、でかいものはでかくして。

浅賀:複雑なものは複雑にして。簡単なものは簡単でいいなって。全部がおいしいって思っちゃたらなんか、寄りすぎてるっていうか。

万人ウケにしようとしちゃうと、ただのつまんないものになっちゃうだけじゃないですか。やっぱそこは人によってこれが好き、これが嫌いっていうのはやっぱりどうしてもあると思うんですけど、それでいいと思っていて。

それでも本当に好きって言ってくれるお客さんを大事にしたいです。

レヴィン:まあ、これがダメなんでしょうね。こだわりが強すぎる。(笑)
一般的なお店は、食べてみんなまあまあな感じで終わると思うんですけど、うちは3割くらいのお客さんはえーって感じで終わっちゃうんですよ。7割の人は大満足で帰っていくんですけどね。

飲食店としてそれはどうなんだって思われちゃうかもしれないんですけど、それでも譲れないって思います。こればっかりは僕らの軸なので。

ただその3割のお客さんにもいつか認めてもらえるよう努力はし続けます。僕らの料理を1人でも多くのお客さんに美味しく食べて欲しいって思いはあるので。

浅賀:そうですね。うちは好き嫌いが分かれる専門料理店ではあるので難しいですけど、今日はガチガチのアメリカン料理を食べたいって思ったらこの店が浮かぶような。アメリカン料理が食べたいからここに来ようって思ってもらいたいです。

レヴィン:前にね、僕の料理を食べながら泣いちゃった人いるんですよ。

僕の出身あたりから日本に来た方がいて、プルドポークサンドのディナーについてるハッシュパピーっていう郷土料理をたまたま出したんですよ。結構マイナーな料理なので多分出してるのが日本でうちくらいなんですよね。

そしたら食べながら泣いちゃったんです。

元々高円寺の頃から来てるお客さんだったんですけど、昼にいつも来てくれてて、初めて夜の時間に来てくれたんです。プルドポークサンドを頼んでハッシュパピー食べて「すげえ久しぶり」って笑いながら泣いてました。

でもその逆で、ハッシュパピーは日本人の方は大体食べないでそのまま残すっていう方が多いんです。多分満足度がイマイチで。
原因は組み合わせだろうなってなんとなくわかってるんですけど、これが本来の食べ方なので変えたくないんです。微妙なラインなんですよね。

吉祥寺という街への思い

今後吉祥寺でやりたいこと

レヴィン:やっぱ吉祥寺で有名になりたいですね。店として。昔に音楽やってた時は別に有名にならなくても良かったっすけど、商売なんで1位になりたいですね。(笑)
トップヒットを狙いたい。この店めっちゃ並んでるっていう風になりたいな。あと隣のヴィレヴァンに負けない。(笑)

浅賀:まあ僕たちは隣とやってることが被ってるって気持ちはないんですけど、多分お客さんから見れば隣のヴィレバンもうちも同じハンバーガー屋で括られちゃうと思うんですよ。僕たち的にうちはアメリカのレストランでやってるんですけど、周囲の認識がそうなら、負けられないですね。

レヴィン:あと、高円寺にはもう出さないかもしれないですけど、違う場所でも店舗はやりたいですね。それこそ、下北沢とか六本木とか。六本木にいるアメリカンな感じのおじさんが食べに来てくれるとか。地域によって客層は変わるので、コンセプトも変えつつやるのも面白そうだなぁ。

浅賀:僕は逆にまた高円寺に出したいかも。前とは違う業態で。帰ってきたみたいな感じで、何かチャンスがあって面白くやれたらいいなと思いますね。

ただ今後下北沢とか六本木とかに出すならその店舗によって食べられるものも変えたりしたい。ハンバーガーだったら吉祥寺店。クラフトビールとおつまみなら六本木店とかね。今もやりたいメニューがたくさんあって1店舗でこんなメニューの量になっちゃってるので。(笑)

レヴィン:吉祥寺だけにとどまらないって思いが強いので。

でもやっぱり高円寺に続き、吉祥寺という街を倒してからって思います。まずはこの街でうちの店を流行らせること。それからかな。

自分たちの理想に近づける

浅賀:結局やってる事は昔やってたバンドとかとあんまり変わらないかもしれない。こういう冒険的なところは。

レヴィン:こだわりが強すぎて売れる曲は作れないみたいなね。(笑)

浅賀:そもそもハンバーガーって手の込んだ料理じゃないんですよ。もう肉は用意されてるし、パンも焼かれてるし、野菜はそのまんまだし。
でもそこで勝負するってなった時、こだわりが差を生むと思うんです。

僕が1番最初に食べたちゃんとしたハンバーガーって原宿でワゴン車出してるところのやつだったんです。
それからハンバーガーにハマって、結構あちこち行ったんですよ。アメリカにもハンバーガー食べに行きました。

僕の人生の中で1番うまかったハンバーガーがアメリカで食べたハンバーガーなんです。現地の雰囲気とかもちろんあると思うんですけど、とにかく雑なんですよ。作りとか。
パンもぎゅうぎゅうに押し付けられて保管してあっただろみたいなパンとか、マスタードもプップって感じであえて綺麗に塗らないみたいな。

うちの方が綺麗に気を使ってやってるしって感じなんですけど、でもその綺麗じゃないバーガーがもうね、めちゃくちゃうまいんです。

何やっても結局それを思い出しちゃうんですよね。僕がたどり着きたいハンバーガーなんです。だから見た目に気を使って提供はしてるけど、どこかで違うなって思う自分もいて。

でも今は写真とかすごい綺麗に撮る時代じゃないですか。僕は雑なバーガーの良さを知ってるからいいんだけど、知らない人から見たらただなんだこれってなっちゃうので当分は今のまま綺麗なものを提供していくと思うんですけどね。

でもいつかはやりたいって思ってます。雑なバーガーの良さをもっと広く知ってほしい。この日本でもそれが浸透すればいいなと思います。

でもやるからにはめちゃくちゃ美味くないといけないので、もっともっと技術を向上させるのが1番ですね。僕もまだ料理勉強し始めて少しなので。これからいっぱい学んで吸収して自分の理想のものに近づきたいです。

レヴィン:雑って言ったら怒られちゃうかもしれないですけど、凝っててめちゃくちゃ美味いけど見た目は気にしてない、味で勝負するっていう男気みたいな。そういうのがアメリカのいいところなんですよね。

僕たちが作る料理を通じてそういうアメリカ的な文化も食べてくれる人に伝えていけたらいいなと思いますね。

それこそ、うちで食べてくれた人がアメリカに行っても「同じ味じゃん」っていう感じ。そんな風にうちの味が広まってくれたらいいですね。

同じ熱意を持った2人

絶対曲げない強い思い、そしてその思いを貫く力のある彼ら。

そんな彼らが作り出すアメリカンレストラン”Fatz’s The San Franciscan”。

日本で生まれ育った彼らだからこそ、日本とアメリカそれぞれの良さを理解しそれを料理という形で表現できているんだと思った。

こんな熱い思いを持つ料理人が作る料理はどんなに美味いのだろう。

実際に足を運び、野望やこだわりで満ちた彼らの”日本で味わえる本場の味”をぜひ堪能して欲しい。

INFORMATION

Fatz’s The San Franciscan Official HP

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