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ライブハウスを経営するということは・・・浅草橋MANHOLE経営者 野口氏

MUSIC

2018.12.10

浅草橋MANHOLEというライブハウスを経営する野口氏。

「ライブハウスを経営していくにあたっての人との関わり方」「また浅草橋への想い」など、ライブハウスを経営しているからこそわかる視点で熱く語ってもらった。

「どうしてもライブハウスを自分が経営するっていうのが夢だったんです」夢を自ら切り開いた野口氏

自分のやりたいことをしたい!

もともとバンドをしていたのもあって純粋にライブハウスという場所が大好きだったんだ。

だから「ライブハウスで仕事がしたい」っていうのが強くて。それで若気の至りっちゃ若気の至りなんだけど、自分でライブハウスをやろうと思ったんだよね。

その時はまだ20歳だったんだけど、地元の仲間に「まだ何も決まってないけど、ちょっとライブハウス一緒にやらない?」って声をかけたら「やる」って簡単に同意してくれて・・・(笑)

じゃあどうやったらできるんだろうって模索するところからスタート。

最初の壁はお金。現実的に考えてお金がないから、借金するところから始めないといけなかった。

次に物件。これが一番苦労したね。「ライブハウスやりたい」って言っても、若いってだけで貸してくれないの。

オープン直前ぐらいに業者のスタッフさんが来てくれて、社長が亡くなったことを聞いた

「ライブハウスなんて貸せない」っていう門前払いもたくさんあった。毎日不動産に掛け合ってたんだけど見つからなくて・・・。そんな中「若い子が頑張ってやるなら、何やってもいいから貸すよ」って言ってくれた大家さんがいたんだよね。

その場所こそが『浅草橋マンホール』の前身になるライブハウス『池袋マンホール』。

そしていよいよ工事開始。お金が無いから出来ることは全部自分たちでやるんだけど、元々事務所仕様の物件だったこともあって業者にしかできない部分も多くてね。

特に防音に関してはいろんな業者に見積もりをとったんだけど落ち込むような価格ばかり・・・。

そんな中すごく親身になってくれた業者さんがいて、結局そこに依頼したんだけど、何から何までびっくりするくらいの破格でやってくれるの。「サイズが合わなくて余ってるのがあるからあげるよ」って防音扉を無料でくれたりね。

工事も終わって、いよいよオープンって時に業者のスタッフさんがお祝いに来てくれたんだけど、「社長と来れずにすみません、オープンを楽しみにしてましたが亡くなりました。」って、さすがに信じられなかったよね。

だってつい最近まで工事に来てたじゃん・・・。

スタッフさんの話だと末期癌で自分が死ぬもの分かっててこの仕事を最後にしようって決めてたみたい。

若い子がやるから、余ってる資材を全部使って破格でやってあげようって。

そんなこと全然言わないからさ……後から知って本当に胸が熱くなった。

ライブハウスは1人では絶対にできない

背中を押してくれたビルのオーナーさん、いつも気にかけてくれた不動産屋の社長さん、防音業者の社長さん・・・

今は皆天国に逝ってしまったけど本当に感謝してます。

池袋に新たなシーンを作ってくれたバンドやレーベルの皆さん。

足を運んで見に来てくれたお客さん。そして歴代マンホールスタッフの皆。

閉店が決まって改めて「ライブハウスは一人では絶対にできない」って思う。

だからこそ、池袋の歴史も背負って、またここ浅草橋で新しい音楽シーンをつくっていけたらいいなって思っています。

18年経営した想いの詰まった池袋マンホールはビルの老朽化の為、2018年3月31日に閉店。2018年に浅草橋へ移転。

ライブハウス×お客さん×地域の関わり

ライブハウスってちょっと特殊かなって思うのが、お客さんが2種類いること

ライブハウスの経営って、ざっくり言うと「ライブする場所を提供する」ってこと。だから、うちからするとお客さんが2種類いるんだよね。「演者」と「見に来るお客さん」。

もちろんライブハウスだからバンドが演奏しやすくするのが仕事。それプラス、バンドマンたちが必死に呼んだお客さんたちが更に楽しめる方法も考えなきゃいけない。それが特殊で難しくも面白い部分かなと思う。

ある意味好きな場所が一個減っちゃった

「やらなきゃよかった」って後悔したことは何回もあるよ。 ライブハウスに来た人が100%満足できるかって言ったら難しいよね、苦情もあるし、嫌な思いをする人もいる。だから何回も「ああ・・・・・・」って。「やっぱりしんどいな」って思うこともいっぱいあるね。

「好きなことを仕事にした」って言ったけど、楽しいだけじゃないし、スタッフの生活を守るという大事な任務がある。だからある意味好きな場所が一個減っちゃったとも言えるかもね。

勿論大好きな場所だけど「好きが仕事になる」ってちょっと複雑な部分があるね。贅沢な話だけど。

楽しいこともいっぱいあるんだけど、なぜか辛かったことの方が鮮明に覚えてるんだよね。

近隣の苦情とかね。音の問題だけじゃなくて人の問題もあってさ。お客さんにも「ビルの付近にたまらないでください」って言ってはいるけど、ぶっちゃけ言いたくないよね。ビル前でたまって喋る楽しさがわかるし、言われるとちょっとムカつくし。

多分どこのライブハウスのスタッフさんも同じ気持ちだと思うよ。だから皆さん、ビルの前ではたまらないでください!・・・ってここで言っとく。(笑)

ライブハウスは人の想いが集まる場所

気軽にお酒を飲んで楽しくしてもらえればいいのかなって思うな。それが全てだろうね

バンドを盛り上げるためには、単純に「見に来てくれる人が増える」のが有効だよね。

SNSとか見てるとノルマが悪者になってたりするんだけど、ライブハウス側としても本当はノルマなんか取りたくない。 だけどお客さん呼んでくれないバンドばかりじゃお店も存続できない。 だからこそライブハウス側も、演者側も、精一杯努力をして、良いライブを提供して、 たくさんのお客さんが遊びに行きたいと思えるような場所にしないといけないよね。

最近はバンド以外の音楽シーンにも興味がある

浅草橋に引っ越して秋葉原が近くなったからか、最近はちょっとアキバカルチャーが入ってきてるのも面白い。

アイドルも入ってきたり、ニコニコ動画関係のイベントだったりね。

ニコニコ動画は名前くらいしか知らなかったんだけど、今は色々教えてもらいながら見てる。 「踊ってみた」や「歌ってみた」って最初はよく分かんなかったんだけど、だんだん楽しみ方もわかってきた。

バンド以外の音楽シーンにもすごく興味があるね。今はネットで誰でも配信できる時代でしょ? そういう人達があえてライブハウスでライブをしてくれるっていうのがすごく嬉しいんだよね。 特にバンドじゃなくて弾き語りの人なんかは、日によっては2、3人しかお客さんいないなかで演奏する事もある。

家でネット配信して不特定多数の人に見てもらった方が全然効率いいよね。でも、生を選ぶ。生の良さって配信と全然違うんだよね。 日々ライブを見ていると、ステージにはいろんな想いが詰まっていてるのがわかる。生の空気感だったり音だったり、緊張感だったり、気持ちだったりね。

画面越しとの違いを楽しんでほしいし、感じてもらいたいな。とか言いつつ今後ライブ配信なんかもしちゃおうかと考えている矛盾。笑 まぁどっちも良さがあるから気軽にライブハウスにも来てみてほしいですね。

池袋にロック中心のライブハウスを作りたい

今後は、また池袋にロック中心のライブハウスを作りたいなって考えてる。

浅草橋はバンドだけじゃなくていろんなライブができるハコにしたいと思って作ったけど、池袋は自分の一番好物のパンクができるようなハコを作りたい。

物件は常に探してて「やるぞ」って気持ちなんだけど、なかなか良いところが見つからないんだよね。

それが今後の野望かな。

好きな場所で楽しい時間を提供したい

野口氏は「バンド経験があるからバンド側の気持ちも分かる」と語る。やはりライブハウスを経営していくには色々な視点から物事を見たり判断したりすることが大切なのだろう。

「バンドにもお客さんにも楽しい場所を提供したい」。一つひとつの言葉には野口氏の優しい人柄が宿っていた。浅草橋から新しい音楽シーンの風が吹くことを、またこれから池袋にパンク中心のライブハウスができることを、楽しみにしながら彼の今後の動きに注目していきたい。

INFORMATION

オフィシャルHP

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