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好きなカルチャーを発信し続けるサロン経営者 MikaJambo氏

ART

2018.10.15

一人の女性として、一人の経営者として。そして、一人のアーテイストとして。西日暮里でサロンを経営しているMikaJambo氏。

サロンを経営する事とは。また女性としての生き方や考え方、MikaJambo氏だからこそ感じられた世界観について話して貰った。

サロンを経営するまでの軌跡

海外のカルチャーに衝撃を受けた

最初の大きなきっかけは、海外の映画に影響を受けたことですね。私が中学生だった当時は、ブラックカルチャーがちょうど流行ってきてたんです。ヒップホップとかレゲエとかがあちこちで流れてて、みんなよく音に合わせて歌ったり踊ったりしてました。CDや雑誌も、海外から日本にたくさん入ってきてましたね。

映画も、そういうブラックカルチャーを元にした作品が結構日本に入ってきていてたんです。当時はそれをビデオテープで見て、「あぁ向こうってこういうカルチャーがあるんだ」っていう衝撃を受けた人も多いと思うんですよ。

中でも、特別に流行っていたのは、ジャネットジャクソンと2pac(トゥパック)が主演の『ポエティック・ジャスティス』っていう有名な映画で、主人公のジャネットジャクソンがブレイズをしているんですね。当時流行ってた太めのブレイズなんですけど、それをみんな真似したくてやってみたりしてました。そういうことが今の私の始まりです。

私がしている「ヘアブレイディング」は、「黒人がやっている、ヘアーを編むこと」って言うとイメージしやすいと思います。「ブラックヘアー」とも呼ばれている、ドレッドやブレイズ、コーンロウなどのスタイルを主流としたものが好きで、自分で編んでました。友達とかにも高校時代に編んだりしてて、その流れで美容師免許を取ろうかなって風になって、今に至ってますね、ざっくり言うと。

「友達編んでてもあれだからうちでバイトして練習すれば?」声をかけられて美容師の世界へ

当時はカルチャーもとても狭く、「あそこの美容専門店にこんなスタイルを編んでいる子がいるよ」というような情報がすぐにまわってました。それで、私も行ったんです、そこのお店に。その時に「友達編んでてもあれだからうちでバイトして練習すれば?美容師免許も取った方がいいよ」ってお店の方が言ってくれたんです。

当時は高校に通いながら免許取得もできたんです。就職扱いにしてもらいつつ、通学して夏休みにスクーリングにも行くこともできました。そして、通学とアルバイトの両方をしながら、美容師免許を取りました。

日本でもヘアブレイディングが始まったくらいの状態で、いろんな店が本当に試行錯誤してました。やはりどうしても黒人と日本人の毛質は違うので、そのまま真似しても適用できなかったこともよくありました。そのなかで私も自分のやり方と店のやり方の良いところをかいつまんだり、こうした方がいいんだとか考えたりしながら自分のやり方を作っていきました。

今ではインターネットで、簡単に動画でスタイルのつくり方とかを見れたりもしますよね。でも、そういう情報というのも、ほんの1ページに過ぎないと思うんです。それよりも、実際に海外のいろいろな場所に行って、たくさんのスタイルを見て、自分で感じてみたほうがいいと思います。

人によって合うスタイルはそれぞれですから、その人その人に合うスタイルをきちんと作り上げてあげたい。そのためにも自分のやり方については、この世界に入ったときから今でも、常に考えていますね。

美容師免許とってすぐお店を出しました

美容師免許を取れた当時、友達や、またその友達で(髪を)編みたい人がたくさんいました。それで自分の顧客層がある程度わかっていたので、もう直ぐお店を出しました!

意外と、お店を出すこと自体はそんな苦労していないんです。ある程度サロンワークでお金も貯まっていましたし、みんなで遊んではいたけれどほぼずっと仕事していた状態でした。

またヘアブレイディング流行っていた時期だったというもあったので、お客さんには困らなかったです。そのままお店はさらっと出せたんですよね。

お店をオープンしようとした時に、ちょうど自分と同じような友達がいたんです。よく1人でお店を経営している人もいますが、せっかくなら2人でお店を出したほうがいいと思ったんです。

と言うのも、ヘアブレイディングは時間がかかる作業ですし、施術の時間はスタイルによって様々です。例えば、よくキッズがやっている簡単なコーンロウで、片側であれば15分から20分で終わるものもあれば、ドレッドで長いと10時間以上かかるものもあります。

慣れもありますが、やはり施術自体は時間が長いほど大変です。でも2人で施術すると時間も削減できて、それはお客さんにもいいことだと思います。また、その子も自分の顧客を持っていたので、お互いの時間と顧客を共有してこのお店オープンして、経営してました。

ヘアブレイディングは、すこし変わった技術でもあり、顧客も限定されているので、取れる予約はすべてやらせてもらっていました。

寝ずにやっていた時期はすごく長かったですね。お店を持ったことで、お客さんがいつ来なくなるのかわからないという集客への不安もずっとあったので、最初の5~10年の間くらいは本当に休みなく働きました。

予約は全部取り、夜中にまで食い込んだり、更には夜から朝まで施術したりしていたので、20代前半までは、仕事しかしていなかったという印象です。そんなこのお店も、お陰様で今年で17年になります。

長年経営してくると、日々のすべてが平坦に感じてしまいがちですが、やっぱりそのなかで大変な時もあります。一番大変な時は、急な休みが取れない時です。妊娠で急に入院しなくてはいけなくなった時や子供できた時も、もう予約が1ヶ月とか2ヶ月先まで埋まっているので、休めません。そんなときの予約制のプレッシャーは大きかったです。風邪もひけないですから、お店をずっと続けていくっていうのは大変です。

その反面、良かった事もあります。黒人と日本人などの、ハーフの子たちで、髪型に悩んでいる子が多いんです。でもそういう子たちが来てくれて、凄く人生が変わったっていう人が多いので、そういうのは嬉しいと思います。

個性を出して生きていくのが難しい時代に このカルチャーを通して感じたこと

好きなことをやっているだけなのに・・・

私には子供が2人います。学校や保育園に子どもの用事で行ったときに、「会社で日々お仕事を頑張られているうちに、ふと気づくと、ご自身の人生で本来したかったことができない環境になってしまっていたのではないのかな」と思ってしまう方をよく見ます。

私自身は、今までも、そして今でも好きなことをやって生きているだけなんです。 でも日本で自分の好きなことをやり続けることってとても難しいことなんですよ。見た目が派手だと、なおさらそういう風に見られます。そしてまた、これが意外と大変だなって思ったのは実は最近なんです。

このカルチャーは、元々偏見がつきものではあります。私も若い頃はそういう偏見をもちながら、「別にファッションだし」「私好きだし」とも思っていました。

ところが30歳を超えて、子供ができ、保育園を含め一般的な社会とやっていくってなると、また違った重さを感じるようになりました。つまりそれは、「きちんとしてなければいけない」という、その「きちんと」という概念のようなものが、自分が思うのと違うというか・・・ 私も今現在模索中なのですが。

今ネットで何でも悪く書かれているじゃないですか。以前、自分が妊娠していたときに、インターネットで妊娠について調べていくと、色んな人の意見が見えるました。そこでは、髪を金髪にしたお母さんが批判されていたり、妊婦なのにヒールを履いていると批判されていたりしていました。

インターネット上で批判されていることが自分にあてはまると、周りから自分はそういう風に見えているのかと思ってしまうこともありました。

だからと言って自分のスタイルを変えるつもりはないんですが、そんないろんなことに「お母さんだから」ということで制限がくるんだなということをよく感じました。しかし、私自身が、自分を変えるというのはそもそも理念にはありませんし、こういう風に自分がいることも商売の一つでもあるわけです。

この、自分を変えないままでどういう風にみんなと溶け込んでいくかというのが人生のテーマです。 多分いろんな世界の変わり者がたくさんいると思います。その人たちもきっとそれがテーマになっていると思います。

アートというものに対して日本は、『何のために』という、その「必要性」を問いかけてしまうようです。 私も別の取材の時に、とても答えに困った問いかけがありました。かなり真面目な雑誌の取材でした。

タトゥーを入れたり、ピアスを開けたりされているお客さんがとても多いので、「ブラックヘアーをやって、なぜわざわざ人に偏見を持たれることをやるんでしょうね若者たちは。何か社会に不満があるんでしょうか?」と問いかけられたんです。

その時は、『逆に社会に不満があってやっている人もいるのかもしれないですけど。そしてみんなもう少し違うステージにいるんだけどな。』と思いました。

社会というものにあまりとらわれず、自分がいいと思ったものを取り入れ、アーティスティックな動きをし、感性のままに生きることができるということは、本当はとても幸せなことなのにな、と私は思うんです。

皆と同じことできることも大切なこと、皆と違うこと出来ることも素晴らしいこと

「自分が好きなこと」って、何か強い信念とかなくても、遊びの一環でも良いと思うんです。それがファッションであってもいいと思うし、ネイルでも髪型でもいいと思います。「やりたいからやる」というとてもシンプルな事でいいと思うんです。

昔の人間はきっと、特にアフリカの人などもそうですが、お化粧も自分の思うようにしていて、それが後々文化になっていると思うんです。「自分の好きなことをする」ということが、「遊ぶ」という見た目や生き方だけの認識にとどまっているような気がするんです。なんだか余裕がない世の中なのかなとさびしく思えてくることもあります。

例えば、うちのサロンは、若いお客さんがとても多いんです。「若いからやってるんだ」という表現をされることも多いです。若いからあんまり深く考えるものもなく、背負うものもなくやってるって感覚の意味なんだと思うんですけど、いろんな子供がいて家族がいて、会社も持ってて、それでもやってもいいと私は思うんですよ。なんでやらなくなってしまうのかな、とさえ思います。

ブラックヘアーをしなくなる理由は、どれも外からの要因みたいなんです。こう思われるとか、会社で禁止されているとか。人が言うことなんて気にしなくてもいいと私は思うんです。確かに、今はちょっとしたことでも、なんでも批判されてしまう時代だから、みんな敏感になってるんだとは思います。とはいえ、批判してくるような、誰なのかすらわからない人が言ってることを気にして、自分が好きなことをしなくなるのは本当にもったいないなと思うんです。

お母さん業をしている人も、会社員している人も、何か仕事をしてお金を貯めて生きていかないといけなのはみんな一緒だと思います。その中で、自分の好きなことをして楽しむということの大切さは、どの人も一緒なんだと思うんですよね。

本当に頑張って働いていて、やっとジャンボでネイルとヘアーをしたら、自分的にはもうストレス発散できたとか。ライブもそうじゃないですか音楽も。そこに行って好きな音楽聞いて、それでストレス発散できたとか。皆それぞれに、自分の好きなことの楽しみ方があると思います。

海外でも、ニューヨークなどに行くと、個人の楽しみ方に対して受け入れる体制が整っているなと感じます。変わったことすると、日本ではみんな驚いて一歩引いてしまうんですが、海外では『人と違う=良い』という発想があり、もうそこで第一印象が違いますよね。

人と違うことをすると、「=変わった人、変だ」と日本では認識されます。ところが海外は、誰もが率先して、それぞれ違ったことができやすい環境が整えられており、またそれが称賛される場所でもあります。もちろん海外でも、批判されることもありますが、日本のように誰かが批判しはじめたら皆で批判するということはありません。

誰かが批判してそう思ったら批判するけど、そのなかにも「私は良いと思う」という人だっている、というのが海外だと私は思ってます。自分の意見がそれぞれでありきなのが海外。だから炎上することもあるけれど、必ず擁護者もいる。でも日本人は擁護につくのも怖がってしまうため、誰かが批判しはじめたらみんな同じコメント何回もしはじめる、といった具合です。

SNSでもそうだと思います。もう批判しているからそれ以上は言わなくてもいいよ、という相手に対してでさえ、さらにみんなで同じ批判を始めます。

日本での教育がそんなふうだから、どうしてもそうなるんだと思います。私の上の子が小学校に入学したのですが、小学校では、みんなと同じことをすることを学んでいるようです。家庭では、とても自由に育ててきました。

子どもには、「学校には、みんなと合わせるということを学びに行くんだよ。みんなと合わせることも必要なことのうちのひとつだけど、でも学校以外ではみんなと一緒じゃなくてもいいんだよ」っていう風に言ってます。

みんなと一緒のことは勿論できるけど、みんなと違うこともできるという人達が多分ここに来てる人たちだと思うんですよね。

お金を稼いで生活するためには、みんなと一緒のこともできないと世の中生きていけない。そのうえで、自分が好きなこともやれてる人って、逆に批判されるべき人ではなく、すごい人たちなんじゃないかなと思います。

これからの生き方

自分がやりやすい環境で常に行っていたい

自分本意のようですが、自分がやりやすい環境で常に行っていたいなと思います。

自分でお店をやっていると、全部自分で決めることができてしまいます。お客さんのためにできることと、お店のことの両面にバランスをとりながら、自分の生活を全て注いで生きています。またそうすることが最終的には、自分しかできない、将来の自分のための環境づくりになっているのだと思います。

会社勤めをされている方で、例えば「これから自分の店を出したい」と思っているのに結局できず、辛くなってしまう人はとても多いと思うんです。

会社の下に属していると、自由が利かない反面、とても守られています。それがふと会社勤めという環境から一歩出た時に、すごく自由にはなるけど逆に、自分一人で戦っていかないといけなくなります。

どうするかを決めるのは全部自分です。無理して働いて体壊すのも全部自分の責任だし、一歩外へ出て、その方向性を決めてやってくのも自分の管理責任。自分が生きる中での時間がないっていうのって、もうみんな思ってることだと思ってるんですよ。

例えば、働くお母さんだったら、そんな自由をどう作っていくかというのは難しい事だと思います。また、お店をしていても、お客さんとの兼ね合いについても考える時間はたくさん必要です。

今までの客さんに満足してもらって、またずっと来てもらいたい。そのためにがんばることは大切だけど、圧倒的に大きな時間を遣うことになる。また、今は従業員育成にも力入れてて、その面でも時間が必要になる。こういうことで倒れちゃうお店もあると思います。

ところで、今、私はスクールもやってるんす。そのスクールの中からジャンボに合いそうな子に声をかけ、そのままアシスタントから働いてもらいたいと思っています。

働いてからまた合うと思ったら、みんなはさらに働き出します。でもそこからは辞めてく人もいっぱいいるわけですよね。その仕事っていうのは学校と違って過酷な部分もあるし、そっからまた学ばないといけないことがたくさんあります。

できることが限られているうちは、どうしてもお給料は思うほどもらえなかったりします。だから、ある程度の基準満たせてたら、どんどん挑戦してもらって、その子たちに合わせたものをどんどん与えていこうと思っています。

それぞれのいいところを伸ばしていって、早く売上もあげれるようになってもらい、その分お給料を払えるようになりたい。よくある「お給料払ったのに、やっと覚えたと思ったら辞めちゃった」というようなこともない状態に作っていくことは大事だなと思ってます。

より自由に生きるように基盤を作っていくっていうところが常にではあります

こういう仕事だと、自分が動いていくらだと思ってしまうと、その仕事以外のプラスの活動ができない人も多いんですよね。

私の友達で今、作品撮りとかを一緒にやっている久保君という人がいます。彼も美容師をやっていて、またカメラマンとして外での活動もすごくアクティブにしている人です。

カメラが好きで撮ってる。それだけでつき進むので、もう別に値段とかあまり関係ないみたいなんですよ。外でモデルハンティングして、どんどん作品作って、もちろん自分でカメラもやる。どんどん作品を作っていく。それが久保君のスタイルで確立されているんです。だから、お客さんも困ってないわけですよ。

だからそこを上手くリンクしてる人がやっぱり残っていて、楽しく生きてる人なんじゃないかなと思います。お互いギャラ無しで遊びでやる、その中からそれをプロモーションに自分で使って、何が引っかかるかわかんない物っていうのを作るから、仕事でもらうよりもなんかこう新しい発見があって、面白くもあります。

とにかく近道をせずに階段を1歩1歩登るしかないんですよね。近道しようとしても基盤がないものは崩れ落ちてしまうので、それをやっていくしかないっていう感じですよね。

あとは、自分の好きなスタイルを貫いて、なおかつ周りともどういう風に融合していこうかなというのは今後のテーマですね。

『好きなことをやり続ける』

若い頃から好きだったカルチャーを年齢関係なく、母になってもその「好きなことをやり続ける」というスタイルを貫くことが現代社会においてどれだけ難しいことなのか。その中でもMikaJambo氏のひとつひとつの言葉には説得力と、明るい人柄が滲み出ていた。

それはきっと日々その事柄と向き合ってるからこそのものだと感じた。性別、年齢関係なく今回のお話はいろいろな層の方になにか響くことがあったのではないか。今後のMikaJambo氏の活躍にも注目していきたい。

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