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「自分のこととかどうでも良い」モノを創り、繋げる。HIGE氏

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2018.11.12

バンドやアーティストを知らなくとも、ファッションアイテムとしても広まっているバンドTシャツやアーティストグッズ。身に付けるとバンドを支持する気持ちがワンランク高まるだろう。

デザインも多岐にわたり、アーティストのキャラクターを体現しているようでもある。

タオルやラバーバンドなど、今やライブキッズの定番になったグッズだけではなく、あらゆるプロダクトをつくっているHIGE氏。

もともとライブハウスのスタッフとしてバンドを近くで見ていたという彼が「創作物に込める想い」とは。

1度手に入れた自分の城

俺、このままこの仕事やって死んだら、悔い残るだろうな

もともと17歳から大工をやってたんだよね。それで22歳で独立してから「外構屋」って仕事をしてて、同時にイベンターもはじめたんだよね。
ある日に現場でブロック積んでたら、先輩から電話で同い年の友人のバンドマンの悲報を聞かされてさ。つい1週間前に、そいつと「次のツアーでそっち行くから!」って話したりしてたんだけど。

あんなに明るく話してたやつが、その後すぐ逝っちゃったのを知って「たぶんあいつ、好きなことやってて、志なかばで死んじゃったんだろうな。悔い残るよな」って思った。そのとき、ふと我に返って「俺、このままこの仕事やって死んだら、あいつと同じだろうな」って不安になったんだよね。不安というか焦りだね。
それで、その日のうちに「俺この現場で辞めるわ」って兄貴に告げて、高崎の「TRUST55」っていうライブハウスでバイトをはじめたんだよ。

子供もその時いたんだけど「3年で独立するからやらせてくれ」って。

「TRUST55」のオーナーにも「売り上げを3カ月で3倍にするんで、社員にしてください」って言っちゃって。
それでがむしゃらにやった甲斐あって売り上げを3倍ちょっとになって、そこからは社員として働き始めた。

バンドマンがライブハウスで働くことはよくあるけど、イベンターがライブハウスで働くって、当時はあんまり無かったんじゃないかな。

このハコ潰します

今でも「TRUST55」のオーナーは、親のような存在で。「この人みたいな50代になったら良いな」と思って、自分でライブハウスを建てようと決心したの。
それで3年経ったぐらいでオーナーに「自分のハコ作りたいっす。辞めさせてください。」って言ったら「そうか!よかったね、自分のライブハウスを建てられるんだよ!そうか!よかった!」って返ってきたのを、今でもよく覚えてる。

物件見つかったんだけど、いろいろあってその物件が契約の日に取り消しになったのが辞める2ヶ月前。ライブハウスやめる15日前に物件が決まったんだよね(笑)しかもこれもかなりなドラマティックで(笑)割愛しちゃうけど。

それで「TRUST55」を辞める日に「壇上で何か話せよ」って言われてホントなんて言っていいかわからなすぎて「このハコ潰します」って言っちゃた。バカだから。オーナーは下の受付で俺の姿を見て笑ってたらしいんだけど。もちろん、その後、土下座して泣いて謝った(笑)。完全に若気の至りだよね。
もともとオーナーは自分1人だけで工事して「TRUST55」を建てたらしいんだよ。

それで自分たちも設備と電気以外の工事は全部自分たちだけで工事して、大変な思いをしながら「SUNBURST」を建ち上げたんだ。ほんとみんなでハコ建てた。血尿がでた奴もいれば粉砕骨折した奴もいたし。(笑)二度とやりたく無いってみんな口を揃えて言ってるけど(笑)

そしたらオープンの前日に「TRUST55」のオーナーが来てくれて「自分の城ができたねおめでとう!」って言ってSM58(マイク)くれたのはホント嬉しかったね。

話したら、やんなくちゃ嘘つきになるでしょ。だから言っちゃう

ライブハウスでブッキングを10年間やってきたんだけど、途中で諦めたんだよね。
「これじゃ無い」かもって。
簡単にいうとパワープレーが通用しなくなったんだよね。これはもうしょうがない(笑)時代と俺がそこに着いていけなくなった。それと、目標とする人がライブハウスやレーベルの人じゃなくなった。違う人になったって事もある。

気持ちを入れていないのにブッキングし続けてたら、今まで出てくれて大事なライブをウチのハコでやってくれたバンドにも失礼でしょ。だからその日に決断して辞めることにした。

それから引き継ぎまで1週間で全部決めちゃった。本当は俺、ものすごく優柔不断でさ。だから必ず物事を決めたら他人に話すんだ。話したら実行しなくちゃ嘘つきになる。だから宣言して、後に引けなくするんだよね。(笑)「決めちゃったし…」って後悔するわけじゃなくて、もうきっぱりと決めるために……これだけは自分のために辞めた。

3年後に「SUNBURST」で働く自分の姿が分からなかった

人間、たかだか人生80年…いや俺、絶対もっと早く死ぬな。だから人生40年か。もし40歳を超えたら儲けもんだと思って15歳から生きてる(笑)。
それでハコで働いていた時に、もう俺35歳だったんだ。

「人生あと5年間かぁ」なんて思ってた時に、この仕事をし続ける未来を想像したんだけど見えなかった。3年後に「SUNBURST」で働く自分の姿が見えなかったんだよね。それもライブハウスを辞めた1つの理由。

SUNBURSTに出てた奴らが注目集めてスコーンと売れた時に「ライブハウス辞めてよかった」って心底思った。だってもし俺がいたらメンバーから相談されるだろうし、口も出すもん。そうしたら絶対バンドは今の位置まで到達してなかっただろうね。自分らが考えた結果。それが一番。その可能性を潰さなくて本当に良かったな。これが唯一、自分のなかでの正解だよ。俺、38年間の人生で1個しか正解無いのか(笑)

ふとした疑問から掴んだ仕事

なんでこんな高いんだろう

「TRUST55」にいる時から、いろんなバンドさんのTシャツやステッカーとかを作って、個人で物販の仕事を手伝ってきたんだけど、その時に「何でこんな高いんだろう?」と思った。

それで自分で注文や発注から手掛けたら、思った以上に安く済んだんだよね。そこから「SUNBURST」を建ち上げて、現SUNBURSTオーナーにイラストレーターを教えてもらってTシャツやステッカーのデザインをちょろっと始めてみたら思った以上に地元バンドにウケて、何故か口コミで県外のバンドさんからも注文を貰えるようになったんだ。

それで「SUNBURST」を辞める1年くらい前に中国のサイトでラババンの工場と繋がって騙されるの覚悟でラババンの制作も始めた。
現会社の礎となったのが、バンドのマネージャーをしている知り合いから「Tシャツの製造が間に合わないんだけど、どうにかならない?」って話が来たんだよ。たしか夏フェスの時期だった。「いつまでに何枚くらい?」って尋ねたら「1週間後に800枚」って言われて……。しかも「その後にツアーを回るから」って上乗せで発注がきちゃって、結局それが1万枚くらいにまで膨れ上がったのね。

しかもそれ、「SUNBURST」辞めるってみんなに言った後で(笑)どっか会社でサラリーマンでもやろうって思ってて。つくづく思い通りに行かないもんだなって思ったよ(笑)

この一件があったから「SUNBURST」辞めたの?って言われたりもしたしね(笑)言った一人はウチに仕事もらってるけど(笑)
それで「もう法人化しよう」と思って、最初は1人で始めた。それで半年後に、同じ同業種で一人でやってた現専務と一緒にやろうかって話になったんだよ。

最初は中国人は正直苦手だったというか大嫌いだった。

当時、200本くらいの小ロットで発注をしていたときに、中国の広州が洪水になっちゃって荷物が出荷できなくなった。それで「香港までは取りにいくから、工場から持って来てくれ」ってお願いをしたんだけど「なんで200本のために行かなきゃいけないんだ」って断わられたんだよ。中国の会社って、ボリュームと単価で仕事をするからさ。
でも結局、会社の反対を押し切って、1人の女の子が実費で香港にハンドキャリーで持ってきてくれたんだ。「自分の会社はおかしい」なんて言い始めてさ。(笑)
全くおかしく無いんだけどね(笑)もう完全に日本人の感覚なのね。
その子がその会社を辞めて、今ではうちの現地スタッフになって工場の選定や色々見てくれてる。
ちなみに、最初にラババンの業者で相対した子はこの子で、この子の最初のお客さんも俺だったっていう奇跡的な展開(笑)
正直、最初は中国人は苦手だった。というか大嫌い(笑)。でも接してみるとフレンドリーだし、真面目。そして合理的。
ただ、そこで思ったのは日本人感覚の不良品と中国人感覚の不良品は全く違うってこと。
使用してて問題ないのであれば中国であれば不良品では無いっていうのが中国の感覚。
そら、日本人の感覚とは合わないよね。(笑)
今はすごく良い関係を築けてると思ってる。工場の生産レベルも高いし、ホントびっくりするね。完全に日本は負けてる。
よく日本の技術はっていうけど、あれ、嘘。(笑)とっくに抜かされてるし、技術が取られたっていうでしょ?
終わってる。被害妄想もいいところ。現場見たらすぐわかる。
だけどね。
検品だけはウチの会社で日本で1本づつ検品するんです。業者を信用してないってことではなくて、「どこまでを不良品とするか」によって色々変わってくる。
だから3万本とかの大型発注だったとしても、数日かけて1本1本検品してる。袋詰めも100個単位にして、物販で売り手が、取り出しやすいように縦に入れたりして、買い手に渡るまでスムーズにいくようにちゃんと段取りを守ってる。ウチのスタッフが守ってる(笑)

基本的にできないとは言いたくない

今はもうほぼなんでもSPやマーチャンは作れると思います。価格によっちゃうけど(笑)
いま座ってるカフェのソファーや机も全部作れる。中国の先輩の会社は建築資材も手掛けてるから、建築資材もブロックも、布団も作れちゃうんだよ。他社に振ることもできるし、何でもできるのがうちの魅力かな。
日本の同業種の先輩が紹介してくれた、
商社を営んでいる社長さんと知り合ってから会社の思考が180度変わったんだ。いろんなものを作れるようになったんだよね。その人は結果的に今、俺たちの兄貴分になってるし、ホント色々お世話になりまくってる。精神的な面や考え方もそう。中国の人との付き合い方や言い回しも全て教えてくれてる。本当にありがたい。
具現化できているモノは基本的に全てチャレンジします。基本的にできないとは言いたくない。金額的な兼ね合いで手掛けられないモノはあるかもしれないけど、基本的に予算に合わせて柔軟に対応できるように、こっちで取り組めるシステムを考えてる。だから出来ないなんて死んでも言いたく無い。だけど、納期が欲しい(笑)

新たな城と仲間と共に

常に新しく色んなモノができてるし、色んなやり方が生まれている。そんなの全部ぶっ壊したい

「MOONSHOT」って言葉をレクチャーしてもらったことがあって
「どうやったら途方も無い、月に行けるだろう」
そのためにどうしたらいいかって考えた時に、近くの場所に到達するための惑星をどんどん作って月に行く。最終的にはどの惑星からでも月にいけるっていう理論らしい。

それと、何でも1回物事を壊してみたらどうなるのかなっていう「GAME CHANGER」という思考を大事にしてる。既にあるゲームを支配するんじゃなくて、新しいゲームを作ってみる、そしたら面白いんじゃないかなと思っててさ。

もともと成り行きが行き過ぎて会社を建てたの。なので折角やるなら面白いことしたい。ぶっちゃけ、経営者ってみんな「面白いことをしたい」って言うけど、実際は口だけで行動に落とせない。それもとてつもなくわかる(笑)

常に世間には新しく色んなモノができてるし、色んなやり方が生まれてるけど、ぶっ壊してまた作っての繰り返しだから。
社長ってイイよね〜とかいう人もいればなりたく無いって人もいるけどそんなにいいモノではないよ社長って。
ただ、お金を産めない社長は「老害」だと思ってる。
会社という組織にとっては。「老害死すべし」
会社は社長と一人称と思われがちだけど、俺はそう思ってないからね。思いがちだけどさ。

常に世間には新しく色んなモノができてるし、色んなやり方が生まれてるけど、そんなの全部ぶっ壊したいんだよね。だからうちの会社には「社長」というポジションすらないかもね。

今までやってたことって、すべて今に活かせる

イラストレーターは2D上でデザインするソフトだよね。あっ!3Dもできるか。
で、頭のなかで3D化できるかっていうと、みんなうまくできない。物事を見てるのは3Dなのにできないんだよ。なかなか。
俺はもともと大工の仕事で3D化のコツを培ったと思う。「型枠」の技術が今になって生きてる。鉄筋コンクリート造の建物とかを建築する際、コンクリートを入れる前に「枠」を作るんだよ。
型枠の作業って、もともと板を張り合わせて完成図を考えなければいけなくて「この枠に、コンクリートを注いだらこの形になる。」ってイメージしないとできないのね。だから2Dを3D化して考えないと分からないんだよ。
あのときの経験がここで役に立ったね。やっぱりこれまでやってきた過去のことって、全て今に生かせるんだろうね。案外なんとかイケるもんだ。(笑)

自分のことはどうでもいい

断捨離って「何かを得る為には、何かを犠牲にしなきゃいけない」と思ってたんだけど、
結構あっさり断捨離できちゃった(笑)。。最初に行った「言ってやらなかったら嘘になる」って事であっさり断捨離できちゃった。
みんな何かしらプライドがあると思う。でも俺は自分に対してのプライドはまったくない。(笑)
「プライドがないのがプライド」もはやよくわからないでしょ。
プライドで飯食えないと思ってるもの。
アーティストやバンドはあったほうがいいと思う。
だけど良い意味でも悪い意味でも俺にはプライドはいらないかな。自分のことはもうどうでもいいや。とりあえず一回横に置いといて(笑)後から考えればいいしさ。この業界に入ってから3年くらい経つけど、とにかく周りの方々にとことん恵まれてる。
SUNBURST辞めるときにも最後に言ったのが「結局、人でした。」これに限る。
とにかく恵まれてる。やっぱり人なんだよ。自分をつくるのは結局、周りの人なんだ。
だから、こんなインタビューなんてホントおこがましいよね(笑)俺よりもっとここにインタビュー載せなきゃいけない人5人はいるけど(笑)絶対その5人の方が内容濃いよ(笑)

生きてきた道を活かす

HIGE氏は「プライドを捨てている」と語る。

その理由は、彼の人生に欠かせない出会いや、つながりがあるからだ。

自分を育ててくれた周りの方々のためにも、自分の人生を否定せずに生かすことを目指している。

彼の製品に人気が出ているのも、常に相手のことを考えながらモノをつくっているからだろう。

製品を通して、彼はこれから人間関係の輪っかを広げていく。

INFORMATION

GENTEN Official website

 

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