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「やってみないと気が済まない」好きなことを追求し続けるデザイナー西山史朗

ART

2018.8.8

CDジャケット、マーチ、フライヤー・ポスター、どれを手に取っても彼が生み出すデザインはただただ「カッコいい」。

UI/UXデザイナー、クリエイティブディレクターとして数々のメジャーアーティストのプロモーションツールをデザインする傍ら、自身のバンドはもちろんの事、インディーズアーティストからデザイナーとして絶大な信頼を受ける西山史朗。

彼のルーツはどこにあるのか?

歩んで来た道、スタンス、これからのビジョンを語ってもらった。

好きを仕事に

得意なこと以外は全部苦手

20歳から28歳まで8年間、初台WALLっていうライブハウスで音響の仕事をしていたんだけれど、自分の力だけで得られるものには限界を感じていて。

プライド持ってやってたし、安月給な音楽業界の中で当時の年齢にしてはそこそこのお給料ももらってたんだけど、それ以上を目指したいってなった時に自分の技術的な努力だけでは解決できない壁を感じた。

自転車操業のライブハウスじゃどんなに頑張ってもこれぐらいが限界だろうなっていうのがあって。

そんなことを考えてたタイミングで震災があって、職場や周りの環境がガラッと変わった。

職を探さないといけないってなった時に考えてたのが「やった分だけのし上がれそうな世界」ってのをぼんやりイメージしていて。それがデザイナーだったんです。

俺ね、好きなことしか頑張れないんですよ。得意なこと以外は全部苦手で。

小さい頃からそうで、小学校の時から授業中はずーっと絵を描いてたし、楽器を弾くのも大好きだったんだけど授業中に楽器は弾けないから、授業中は絵描いて、昼休みになると楽器を弾きに音楽室とかスタジオへ行く。

夜家に帰ったら寝落ちするまで楽器弾いて、楽器抱いて寝るって流れを高校生まで続けてた。

切って貼って手描きで絵を描いたのが初めてのデザイン

どこからデザインと呼んだらいいのか分からないけど、今のクリエイティブの原型に近いものでいうと、高校出たばっかりぐらいの頃に自分のライブのフライヤーを作ったのが初めてのデザインかな。

当時影響受けた80’sから90’sのアメリカのバンドみたいに、切って貼って、手描きでジム・フィリップスとパスヘッドを混ぜたみたいな絵を描いてていうのが楽しくて。

そこから音響の専門学校でフォトショップとかイラストレーターとかのデザインソフトを手に入れて、PCでもデザインし始めて。

初めて人に頼まれて作ったのはRatchildってバンドのロゴで。

覚えたてのイラレをこねくり回して、Ratchildのボーカルと一緒に、あーでもない、こーでもないって言いながら。

初のクライアントワークですね、ノーギャラだったけど(笑)

それからそいつとよくジャケとかTシャツとかを作るようになって、そいつが「こんなイメージのデザイン創って欲しい!」って言ってきたのを「ちょっと待って、それどうやって再現すんだ?」って試行錯誤しながら。

それも遊びの一部でしたね、小学校の時に絵を描いて遊んでた延長で。

やってみないと気が済まない

その頃は本当になんでも作りましたね。

マーチに関してもデザインだけじゃなくて手刷りもやってみたし、音源もジャケのデザインだけじゃなくて自分でレコーディングもしてみたり、レーベル作って流通かけてみたり。

そういうのをまるっと含めて「ものづくり」が好きだったんですよね。

1回全部やってみて、得意じゃないこと、やりたくないことは俺は頑張れないから、これより先は信頼できるやつ、俺より得意なやつにお願いしようっていう。

デザイナーって言っても広義で、今の俺の仕事としてメインの分野はWebデザイナーなんですけど、それも自分のバンドのホームページを作ってみようっていう興味から、作り方とかを自力で覚えるところから始まって。

やってみたら、これ得意なやつだっていう。とりあえず1回は自分でやってみないと気が済まなかったんですよね。

飛び込んだプロの世界

音楽の仕事しかしたことなかった

いざ仕事を探し始めると、面白そうだなって思う制作会社って結構なエリート集団で、軒並み門前払いだったんですよ、実務経験ゼロのペーペーが履歴書送っても。

デザイナーの求人って、履歴書と一緒に自分が作ったデザインのポートフォリオを送るんで、俺の場合バンドのジャケとかフライヤーとかホームページとか、そういうのを送ってたんですけど。

色んな会社に書類落ちして改めて感じたのが「俺、音楽の仕事しかしたことなかったな」って。

高校出てすぐ小岩のリハーサルスタジオでバイト初めて、その後ライブハウスに入って、就職活動始めるまでの10年間。

就活に苦戦してるうちに「俺何がやりたかったんだっけ?」ってなってきて。

それで思ったのが、音楽の仕事辞めてデザイナーになるんじゃなくて、音楽に関わるデザインをすればいいんじゃんって。

そんな時にちょうど、メジャーアーティストのサイトとかをやってるIT会社がこれからデザイン部門を作りますっていう求人を見つけて、そこにポートフォリオを送ったらそれが刺さって。

うまく転がり込んだ感じですね(笑)。

そこから本格的にデザイナーのキャリアが始まったんですけど。

お金をもらって仕事をするっていうマインド

ライブハウスにいた頃は仲間のバンドや出演バンドに頼まれて色々作らせてもらったけど、当時はプロのWebデザイナーはどういう段取りで、どんなクオリティーで何をするのかっていうのをちゃんと理解してなくて。

最低限のマナーとか、締め切りを守るとか。

結果的に期待を裏切ってしまったこともあったし。

プロになって、デザインの技術的なところで言えば「通用するじゃん、俺!」っていう感じだったんですよ。

結構仕事できたし(笑)

だけど、そういうお金をもらってキッチリ仕事するっていうマインドがいかに足りなかったか、っていうとこを痛感したのはすげー覚えてますね。

バンドをコーディネートする

クライアント、メジャーのアーティストから要望があってデザインする時に、自分流のやり方があって。

A案とB案はちゃんと教科書通りのデザインを下地に作って、そこでC案にそっと、自分のやりたい放題やったデザインをすっと出す。

「要望と少し違うかもなんですが、俺はこういうのが合ってると思いますよ!」ってのををC案に忍び込ませる。

Webデザインの仕事って、洋服を着せてあげるのに似てるなって思うんです。

ライブのステージングとかCDのジャケとかのアートワークだとしっかり世界観を表現できてるバンドでも、Webデザインになると無頓着だったりセンス自体がダサかったりする。

でもこのご時世、ホームページのクリエイティブってそのバンドのブランドを形成する上で結構重要な要素だと思ってて。

そこに、俺がコーディネートするとこんな感じがお似合いなんじゃないですかね?っていうおまけのC案。そうするとC案が通ったりするんですよ、高確率で。

そういう瞬間が楽しみというか醍醐味だったりはしますね。

デザイナーとして見えてきたもの

カルチャーをデザインしたい

デザインって実は見た目を作るだけじゃなくて、設計みたいな意味に近いんですよ。

目に見えないものに関しても、例えば人の行動を設計するとか、ライフスタイルを提案するっていうのもデザインで。

それだけ広義だし細分化された中で、俺は職業としての肩書きは通り越して、カルチャーをデザインしたいなと思ってて。

例えば今やりたいことのひとつに、自分のバンドマーチのブランド化計画っていうのがあるんですけど。

もともとマーチのデザインをやり始めたのは、こういう服が欲しいっていうのがあって、出来合いのものを買えばそこそこ高いとか、欲しいものと微妙に違うとか、これとこれの間をとったちょうどいい奴が欲しいとかで。

だったら自分で作っちゃえっていうのがきっかけだったんですけど。

それがもう、自分が作りたいものがバンドマーチの枠を超えてきてて。

自分のデザインの好みがどんどんシンプルなものになってきて、極論バンドロゴもなくていいぐらいの。

そうなると、どこにマーチとしてのアイデンティティを持ってくるかっていう。

表面的なデザイン性を飛び越えて、クオリティーの細かいところを、それもうアパレルブランドじゃんっていうレベルに持って行きたくて。

バンドマーチの「安かろう悪かろう」みたいなのを覆したいんですよね。

それを手法とスキルとアイディアでどこまでやれるか、っていうのを今考えてるところなんですけど。

記憶にも記録にも歴史にも残る何かをしたい

俺らよりもっと先輩の時代だと、書いたものが紙のまま後世に残ってたり、音源がアナログで残っていたり、映像や写真もフィルムで残っていたり。

最近思うのは、今の時代は形のあるものを作っても、例えばCDとかをちゃんとプレスして世に出したとしても、消費されて破棄されて行っちゃうんだなぁって。

今の仕事は一発作れば何十万人が見るような仕事をしているけど、それも決して一生残るものじゃないし。

「記録より記憶」みたいなのも、記憶してる人が死んじゃったら残らないじゃんって思って。

形に残るもの、自分が死んでも残るものを作りたいっていうのが、多分俺のそもそものモノづくりのモチベーションの根源なんですけど。

実際バンドやってレーベルやってとか、仕事として商業デザインをしてみて、本当に残る、やべぇモノを作るにはどうしたらいいかっていうのを、より強く考えるようになりましたね。

だからこそ、記憶にも記録にも歴史にも残る何かをしたい、っていうのが今の野望です。

 自分の中にあるデザインというスタイルを創る

好きなことを仕事にすると嫌いになるという話をよく耳にする。

そんなことは彼には関係ないのかもしれない。

好きなものしか頑張れない。自分のこと以外どうでも良い。つまり好きなことは、周りに目もくれずとことんやる。

彼の目には、嫌なものなど見えず、その先にはビジョンのみがあり、彼のそのスタンスを彼自身でこれからもデザインし続けるのだろう。

INFORMATION

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