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象徴として生きていきたい。生まれながらの表現者『川渕かおり』

SPECIAL

2018.11.5

強い意志を持った女性である。
まっすぐな瞳は美しく、紡ぎだす言葉一つ一つはストレートで、迷いはない。
ロックバンド『KAO=S(カオス)』のボーカリスト、Sword Performance Team 偉伝或〜IDEAL〜主宰、剣舞師、モーションアクター等々・・・様々な顔を持つ彼女。

今回はそんな川渕かおりの半生から未来までたっぷり聞かせていただいた。

たくさんの肩書き

Photo by ossie

すべての表現を均一化してるような感じ

自分の活動としては、まず日本刀を使った「剣舞師(けんぶし)」。(日本刀を示して)これはもちろん真剣ではないんですけれども、日本刀を模したジュラルミン刀とか、竹光(たけみつ)と呼ばれるお芝居で使われる木の刀ですね。竹光を使って、実際に殺陣に使う型をいくつか組み合わせた剣舞や型を披露します。

他には、KAO=Sというアートロックバンドのボーカルや、偉伝或〜IDEAL〜という侍チームの主宰、ファイナルファンタジーシリーズやニーアオートマタなどのゲームのモーションアクターをしたりしてます。

元々の出発点は、「演技」という一番のコアに、体の動きとしてのモーションと殺陣が繋がったっていう感じだったんです。

でも今は「演技」っていうよりも、すべての表現を均一化してるような感じだから、「演技としての~」って意識は特にないです。

モーションアクターはライフワーク

モーションアクターっていうのは、CGキャラクターの動きの元データをとるための俳優さんのことです。それぞれの関節に、マーカーと呼ばれる反射材をつけて、赤外線で360度いろんな方向からカメラで撮ります。それを線のデータとして後でキャラクターにはめていく…キャラクターの元になる役者の仕事です。

元々企業に就職、って全く考えてなかった。大学を卒業して、小劇場で舞台をやりつつ、英語を使ったバイトとかして生計を立ててました。ちょうどその頃、当時お世話になったキャスティングの方から、ファイナルファンタジーのモーションアクターのオーディションの情報を頂いたんです。ファイナルファンタジー大好きだし、アクションをやりたい、主人公を演じたい、と思ってオーディション受けたんですよ。そしたら全く戦わない、かわいい女の子の役になって。これ僕でいいの?みたいな。

当時はモーションアクターっていうものをよくわからず、全身タイツみたいなのを着てる人ね、くらいの認識でした。ただゲームが大好きだったんで、とにかくどんなものでもやりたいと思ってた。そこから10年くらいかな。モーションアクターは今ではライフワークですね。

着物を着るようになって、まさに侍チームになっていった

役者やりつつ、モーションアクターもやりつつ。そして同じころに偉伝或〜IDEAL〜っていう侍チームを作ったんです。

よく役者がやってる立ち回りやアクションシーン、殺陣。そこだけをくり抜いてショーにして、海外でパフォーマンスしたいと思って、イデアルを作りました。

イデアルでの自分の役割はリーダーであり、演出兼作家でもあります。自分でもパフォーマンスもしますね。当時はどちらかというとファンタジー寄りの、ファイナルファンタジーみたいなキャラクターでやってました。

でもイデアルを海外に持ってく時に、もっと日本的なこと・日本人であるっていうことを、まずちゃんとやろうと考えたんです。

そこから着物を着るようになって、まさに侍チームになっていったっていうような感じです。

海外での活動は視野に入ってた

Photo by Mikio Ariga

SXSWに応募したらすぐに合格して

イデアルでの侍パフォーマンスと並行して、私は別の音楽ユニットもやっていたんですよ。ギターの人と、自分が歌を歌うっていう二人組で。

あるとき、相方がライブするっていうので観に行った時に、後にKAO=Sのリーダーになる山切修二が対バンで出ていたんです。

そのライブがすごいよかったんですよ。帰り際に彼に声をかけて、「私は刀を使うパフォーマンスやモーションアクターをやってる」って自己紹介をして。そこから「今度何かセッションをしましょう」っていうことになって、二人でスタジオに入ったんです。実際に本番も一回して、それがKAO=Sの一番最初に作った『桜の鬼』って剣舞の曲です。

KAO=Sの一番最初の始まり。そこに元々僕の友達だった津軽三味線奏者が入って、三人になった。日本刀あり、津軽三味線あり、そして独特の世界観を持っているから、早い段階から世界に行ってみたいと思ってました。

結成が2011年だったんですけど、翌年のSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)に応募したらすぐに合格。2012年に初めてのSXSWに出演したんです。向こうの反応はすごいよかったですね。

日本っていい意味で、行儀良い見方をしてくれる人が多いじゃないですか。特にKAO=Sの音楽って、私が役者っていうのもあって、お客さん側から言えば、演劇やショーを観ているってイメージが強いと思うんですね。だからか、静かに見て、終わったら拍手をしてくれるようなスタイルのお客さんが多いんです。

ところがアメリカに行って衝撃的だったのは、みんな飲みながら観てるんです。静かなシーンも全然静かにならない。いいと思ったら拍手し奇声を上げ、もうほんとにマイペース。それで、こっちもそれにどんどん乗っかる。そしたら最終的に、ものすごい歓声。受け入れられてる感はすごく強かったです。

SXSWには二年連続でいったのかな?2012年はアメリカでツアーをして、2013年はSXSW出演でテキサス・オースティン、そしてドイツとフランスとイギリスも行きました。

CNNから問い合わせがあった時は嘘かと思った

Photo by Mikio Ariga

フランスではJAPAN EXPOに出たんです。ポップカルチャーとか漫画とかコスプレとか、ほんとに好きな人が多く、コスプレイヤーがめちゃめちゃいました。当時もファイナルファンタジーのモーションアクターをやってたんで、そう言うファンの人たちも沢山来てくれました。

逆にドイツはすごく武士道とかへのリスペクトが強かったです。参加したイベントがそもそも文化的傾向が強く、お客さんも日本の伝統的文化や日本映画が伝えたかったことみたいなものに興味がある人が多かったです。殺陣のワークショップをやると、皆さん構え方とか知ってたりして。ご自分たちで勉強されてるんですよ。

2014年にはいきなりアメリカのCNN Internationalからメールが来たんです。問い合わせがあったとき嘘かと思いました。いたずらかと。

CNN International局の『The Art of Movement』という、動きと芸術の関連性をテーマにした番組で、日本のバンドとしては初めて特集されたんです。私がしている踊りと剣舞が、どういう風に音楽に融合していっているのかっていう観点で特集されました。

(番組リンク https://edition.cnn.com/videos/bestoftv/2014/12/15/spc-art-of-movement-japan-rock-kaos.cnn )

ご縁があって色んな国に行かせてもらってる

2015年には中国・ブラジルに連続で行ったんですけど、中国は刀が持ち込めないんですよ。なので刀は無しで、変わりに和傘で傘の舞をしました。

その後にブラジル。

ブラジルは日本との国交120周年記念のイベントだったんですけど、メインアクトとしてF1レースも開催されるインテルラゴス・サーキットでショーをやらせてもらいました。

そしたらその打ち上げで出会ったパラグアイから来た人が「すごい良かった。次はうちの国に呼びたい」って言ってくれて、パラグアイに翌年 2016年に行きました。

2017年にはSword Performance Team 偉伝或〜IDEAL〜でチリにも行きました。

それ以降だと、KAO=Sとしては2017年4月にスペインでイベントに出演。2018年には2月にニュージーランド、8月にドイツでも大きなイベントに出演させてもらいました。

毎年色んな国に、毎年ご縁があって、色々行かせてもらってますね。

ずっと身体を鍛えてきた

Photo by ossie

ジャッキーチェンと戦いたいと思ってカンフーを

もともと幼いときから海外は漠然と視野に入っていました。インディジョーンズみたいに世界中を旅したかったんです。

子供の頃はアクティブでしたね。ただ性格的には、繊細すぎて人が嫌いでした。

人間の中にいるのが嫌で、山とか森とかで一人で遊んだり。それで体が鍛えられたんでしょうね。

それと、父親が陸上自衛隊のパイロットだったんです。小さい時から自衛隊のトレーニングマシーンで父親と一緒に腹筋したりして、そこでも体を鍛えることが多かったです。

中学の時には中国武術、カンフーをしてました。カンフーやりたかったのはジャッキー・チェンがすごい好きだったから。ジャッキー・チェンと戦いたいと思ってカンフーを始めたんです。

ミュージカルで芝居と音楽と踊りを一気に

ピアノもやりました。お母さんが私に音楽をさせたくて、ピアノを6年間くらいしました。それと、クラシックバレエも少し。

高校時代にはミュージカルも。ミュージカルで芝居と音楽と踊りを一気に経験しました。

大学卒業した頃には小劇場と出会い、色んな劇団を転々としながら木刀を持って、時代劇を始めた。

そこから殺陣をやるようになりました。

役者のほうが長いんですよ。でも役者やってると、嫌でも人の中にいないといけなくて。その中でいかにマイペースでできるかっていうのをだんだん学んでいきました。

超絶にポジディブシンキング

Photo by ossie

人生死ぬまで右肩上がり

座右の銘は、「人生死ぬまで右肩上がり」です。常に今がピーク。あとはうちの母親がよく「運命は言葉の方向に従う」って言ってて。言霊ですかね。悪いことを吐けばそうなっていくし、目標を決めて言葉としてちゃんと出していけば、そういう方向に自分も向かっていくっていうことですね。

今自分が立っているところは、これまでの偶然が重なって行き着いた先でもあると思うんです。マイペースに、そしてあまり流れに逆らわずに。自然に今はあるがままにいけるように。昔はめちゃめちゃ逆らって、苦しい時もありましたよ。乗り越えた今は、それが同じことがあってもそこまで痛くなくなりましたね。

トラブルが起きた時に全然マイナスだと思わなくて

2018年2月に出演したお芝居の舞台の本番中に、舞台から落ちて怪我しちゃったんです。

人の背中を蹴って飛ぶシーンだったんですが、舞台が斜めに設定されていて下に落ちるとけっこう高低差があったんですね。連続本番が8日間くらい続いてたから、たぶん疲れもあってうまく着地できなかった。

バレンタインデーに怪我して、そのまま舞台は続けて、翌週にはKAO=Sでニュージーランドに行って、松葉杖でパフォーマンスして来ました。

僕は不思議と、トラブルが起きた時に、全然それをマイナスだと思わなくなっちゃってるんです。

何が起きても「まあ今このポジションにいるなら、次はこっちのポジションに行くだろうな」みたいな。何かしら意味があるって思ってる。

昔うちに侵入者が入った時も、「被害者が他の女の人じゃなくて良かったな」って思ってた。

普通の人だったらトラウマになることでも、これを経てランボーみたいに強くなるって思ったりするんです。

ポジティブなのか、あるがままなのか。

型にはまらず、自然体で

Photo by ossie

象徴的になりたい

表現ってステージ上だけじゃないって思ってます。人間自体が表現する器だと思ってるので。すべてが全部繋がってる。食べるものとかもそうだし、見るものとか聞く話とか。あと旅をするとかもそう。

野望はいっぱいありますよ。カテゴライズし辛いアートをやってるので、変に型にはまりすぎたくないっていうのはあるんですよ。ただ、逆に人に伝えるときには分かり易くしたい。

象徴的になりたいんですよね。自分の体と刀を使い、表現は続けていく。その表現を通して、直接的ではないけど、何かしら活動に関わりたい。そして「困ってる人たちの何かしらの手伝いをしましょうよ」っていう象徴になりたい。

例えば、国と国をつなぐ架け橋。女性の地位が低かったり認められたりしてないような国の、まだ行き届いていないところの底上げをするような活動に。

また、その活動の対象が動物だったりするかもしれないし、例えば「独り寂しく暮らしているおじいちゃん・おばあちゃん達の話相手になりましょうよみなさん」みたいにやる活動になるかもしれない。それが何かアートでできればいいかな。

偽善も慈善も同じ事をやっていれば変わらないと思ってます。偽善と言われようが、何でもいい。アジテーターみたいになってしまうとまた違うし、宗教家でも政治家でも違う。あくまでアートっていう自由な表現の中で、後押しをしたい。

男性でも女性でも人間っていう大きな中にいる

普段はめちゃくちゃ男の子っぽく見られることが多いです。でも髪が伸びてきて、近年ずっと長いままだから、少し外見的には女の人らしくなってきたかな。

僕は男性でも女性でも、魅力的な人がいたら好きになる。それがおじいさんでもおばあさんでも、年下の人でも。男の人だから女の人を好きになるとかそういう固定概念っていうのも、すべてをフラットに自由に見たい。たぶん根っこの部分で、どこの国の人であっても、どういう宗教であっても、男性女性であっても、みんな「人間」っていう大きなものの中にいるって感じてるんです。

ある時、海外で『和』を武器として出しているのが、過剰ラッピングだなって思ったんです。始まりはもちろん着物や日本刀だとかの『ザ・和』っていうアイテムを武器として持っていったんですが、何度も海外に行って日本人としてパフォーマンスをしていくうちに、無理に「これが和ですよ」って言うのが非常に余計なものに思えてきたんです。

余計な「和の要素」は上乗せせず、日本人である誇りを持って内側からパフォーマンスをしていったほうが、日本人の精神が前面に出せると感じるようになったんです。日本のいいところや、日本人であるってことに、、僕は誇りを持ってる。ただそこに居るだけで、日本人というDNAが存在する。だったらもうストレートに『人間・川渕かおり』っていうのを出していくのが本当のアートなのかなって思ってます。

人間・川渕かおりというアート

インタビュー直後に彼女のライブを観る機会があった。

川渕かおりが立つステージ上からは、生命力のシャワーが降り注いでいるようで、それはとても神々しい空間だった。きっとこれからも彼女は様々な顔を見せてくれるだろう。そしてどの顔も、その全てが『人間・川渕かおり』というアートそのものなのだ。

INFORMATION

【ライブ情報】

川渕かおり完全復活単独公演「桜の鬼」

https://youtu.be/bWKetzzXp3A

川渕かおり Website

KAO=S Website

Sword Performance Team 偉伝或〜IDEAL〜 Website

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