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三つの顔を持つ男 もりと氏

SPECIAL

2018.11.30

表の顔は会社員。一方バンドではベーシストとして、また副業ではイラストレーターとして活躍しているもりと氏。3つの活動を並行して進めていくことの楽しみや、それぞれの顔としての自分の在り方、今後の展望などを本人に語ってもらった。

会社員をやりながら両立するとは

ペースとしては理想に近いかな

基本は普通にサラリーマンだね。週5で働いてて、同時にザーゴンさんっていう方とバンドしたり、外回りのデザインとかも手がけています。

高校生ぐらいからかな。「キャラ」っていう北浦和のライブハウスに出入りしてました、そのキッカケで2、3年前にザーゴンさんに「バンドしよう」って誘ってもらいました。

バンド活動でいうとそこがメインだね。それでザーゴンさんを通してデザインしたり、ロゴ作ったり、そういう仕事をもらっています。本職の合間に並行して進めてる感じ。両立っていうのはあんまり意識したことはないですね。基本的にライブは土日だし、時間的にもそんなに被らないですね。

バンドメンバーも、みんな他にバンドやってたり、ザーゴンさんも働いてるから、練習も金曜の夜にわちゃわちゃやってる。だから実は「スケジュール的にきつい」とかは全然ないですね。

僕は元々バンドしてたんですよ。でもそれを辞めて、3、4年前に正社員で働いてたんだけどやっぱりバンドをやりたいと思いまして。今はその通りバンドができてるし、ペースとしては理想に近いかな。割とみんなちゃんと弾ける人だから細かいことまで打ち合わせなくても、そこそこのクオリティは出せてるし、一番やりやすいのかも。

色々「やりたいこと、やってみたいこと」ができたっていう感じ

働きながらバンドしてて、思うことがありまして。当たり前なんだけど「社会人的な考え方」って世の中のルールに乗っ取ってるじゃないですか? だからそこら辺の技術とかノウハウを身に付けとかないと、本当にやりたいことができた時にエントリーしづらい気がします。

例えば「ソニーミュージックで働きたいです」ってなった時に、社会人経験もないのに「やらせてください」って言っても門前払いだよね。職歴積んで、ちゃんと社会的なスキルがありますよって言えるようになれば、”道”が広がるかなって。

それと、例えば「グッズを作りたいときに」パッと作れる環境が会社にはあることも学んだ。業者との交渉のフローとかプロモーションの方法とかも知ったし、働き始めて幅が広がったね。「やってみたいこと」が増えた感じ。社会に出ないと、そこには気づけなかった。

皆、売れるためにバンドやってると思うんだけど、プロモーションひとつ取っても、いくらでも方法はある。お金のかけ方とかにもよるけど、道はひとつじゃない。社会人になって視野が広がったから、違う角度からアプローチできるようになったなって思います。

「もっとこういう風に出てきたら面白いんじゃないかな」

バンドが売れる方法のひとつに「地道にライブやって、着実に知名度とか人気を積み上げる」っていうやり方もありますよね? 会社に入って分かったのは、もっと効率的に売れる方法。例えば大きな予算を持ったレコード会社にピックアップしてもらう方が断然近道だよね。

今のはイメージとして挙げたひとつの例なんですけど、「もっとこういう風に出てきたら面白いんじゃないかな」みたいな売れ方は色々考えてるよ。僕も実績があるわけじゃないんで、机上の空論かもしれないけど。

僕、営業やってるから、知らない所に電話かけて「うちの商品提案させてください」みたいなお願いすることが結構あるんだよ。それってバンドマンも同じだと思う。レーベルに電話するのもありだね。入口は作れる。

いま、辛いことは何もないなぁ。

正社員になって良かったのはお金があること。カツカツでバンドやってるわけじゃないから「売れなきゃ!」とは思わない。運よくどっかで引っかかって大きめのステージでやれたらいいなとかは、ぼんやり思ってるんだけど。まぁ基本的には心から音楽を楽しめてる。

両立してて大変だったのは、一度ライブの日に抜けれない仕事が入っちゃって、代役にベースを弾いてもらったことくらいかな。

絵を描くのは4歳くらいから好きだった

イラストレーターの話をすると、絵を描くのは4歳くらいから好きだったね。それで今は友達のバンドとか自分たちのバンドのCDジャケットを描いてる。実はLINEのスタンプも出してるんだけど、これが全然売れてない……(笑)。

セリザワっていう名前でやってるんだけどね。Yahoo!ニュース見たら、ラインスタンプのクリエイターTOP10の平均販売額は6億円って書いてあったんだ。「くそ、俺がベスト10クリエーターだったら、今頃ハワイにいるのにな」って(笑)。それを期待してこの子を作ったんですけど、1万5000円ぐらいにしかならなかったんだよね(笑)。

色んなことをやってきたからこそ築けた人生観

当たり前のことをちゃんとできる自分になりたい

大切にしているのは、あいさつをすること。あいさつだけじゃないんだけど「当たり前のことをちゃんとやりましょう」ってのは、最近特に僕ができてないことだから。

世の中のルールというか成り立ちって割とシンプルだよね。ちゃんとあいさつをすると、ちゃんと返ってくる。バンドでいうと、ベースの練習する、それだけベースが上手くなるよね。だから単純な話なんだけど、当たり前のことをちゃんとできるようになりたい。

大事なのが「笑って泣ける」っていうことなんだよ

冷静さの隙間にあるお茶目心というか、そういうのは大切にしたい。

笑って泣けるコメディ―が好きなんだ。大事なのが「笑って泣ける」っていうことなんだよ。「泣けて笑える」じゃない。まず笑うことによって、ストーリーに入り込みやすくなる。

で、入り込んだところで、ワンステップ進化するみたいな。例えば仕事でもそうだよね。自分が伝えたいことを取引先とか会社の人間に通したいときは、一度ふざけて笑わせることによってハードルは下がるんだ。

門戸が広くなるっていうか。言いたいことを言い合える関係になるのってすごく大事だと思うんだよ。特に、もともと不真面目な人間だからふざけたりするのも好きでさ。やっぱりそこを生かしていきたいなぁって思ってる。

スイカの塩みたいなものですね。

要は、しょっぱさがあるから甘さが引き立つみたいなことは、笑えて泣けるみたいな話につながってると思うよ。ただ泣かしにかかるだけじゃなくて、まず塩を振って笑ってから、ホントに真面目なことを言ったりすると、よりぐっと心にきたりするんじゃないかなって思います。

大切にしてることが3つある

仕事にしてもバンドとかデザインにしても、大切にしてることが3つあります。

まず「頑張りたさ」。

これは、自分が気が向くところに限定した話かな。好きなことがイチバン生きるはずだからね。短所を埋めるか、長所を伸ばすかみたいな話がよくあるけど、それは絶対長所を伸ばす方がいい。他の人が頑張って100点取れるところを120点とれるポテンシャルがあるんだから。それがモチベーションの部分ですね。

次に「選ぶ」。

「これがやりたい、こういう風になりたい」っていうことに対して、自分で選択するようにしています。

最後に「調整」。

アジャストメント。序盤の話じゃないけど、満足できる結果を得るためにはいくつかやり方がある。目標に辿り着くためにはいろんな道があって、自分がすごい苦労しなきゃいけないルートもあるじゃん。「どうしよう、この道を行けば絶対心が傷つくな。でも一般的にみんなが通ってきてる道だからな」って安直に流されるんじゃなくて、自分でちゃんと余裕を持てる道を探して進もうかなと。そもそもそこで挫折しちゃダメなんだよ。だから目標を達成しやすいような環境を選んでいます。

例えばいま渋谷の会社で働いてるんだけど、そこは通勤が辛いんだよね。僕、埼玉から埼京線で来てるから遠いのよ。でも満員電車に文句を言うんじゃなくて、引っ越したり会社を変えたりして、ストレスがかからないように「合わせる」。これでいいんじゃないかな(笑)。

今後の創作意欲と野望

「つくる」っていう行為は、ある程度の自己顕示欲を開示しないといけない

僕は音楽をやってるけど、実は他の音楽とかを聞いたりしない。

自分のバンドの音源ばっかり聴いちゃうんだ。やっぱり自分が作った物を確認するのがイチバン楽しいからね。毎日、その積み重ねですね。

デザインに関してもそう。自分の絵を見たりするのはもちろん、制作ってときどき保存しながら進めるじゃん。それで後から完成品と制作過程とを見比べて、全然違っていたりすると、やっぱり面白いです。

「つくる」っていう行為は、ある程度の自己顕示欲を開示しないといけないんだよ。そこが、面白いのかも。特に日本人は自分を出さない。僕は分かりやすく「これは自分が作ったもんだぞ」って嬉しさを感じながらやってる。

自分の作品がいろんなシーンに広がったら面白い

今後も楽しいことをやっていければいいなと思う。

バンド方面ではザーゴンさんが主催するレーベルの方々とか、周りの人を巻き込みつついろんな物を作ったりしたいな。今のバンドじゃなきゃできないことって、たぶん色々あるからさ。

ザーゴンさんはかなり強力な人物だから、彼と共同で何か仕掛けたら面白いだろうなって。輪をちょっとづつ広げてからデザインも手がけたいな。今は自分のバンドのためだったりインスタにアップするために描いてるんだけど、そういう活動の輪がもっと広がったら嬉しい。自分の作品がいろんなシーンに広がったら面白いのかなぁと思いますね。

「一見クールな表情の中に隠し持つお茶目さ」

とても冷静な口調だったが、不意に冗談も飛び出すようなギャップがとても面白い。

当日、まとっていたのはスーツだったが、その奥底には、紛れもない創作に対しての熱い意欲と、人とは少し違った雰囲気が顔を覗かせるクリエイターとしての顔を感じた。

人としての大切な要所はおさえつつ、楽しいことやふざけることが好きだと熱弁する様に好感をもてた。人として興味深く、今後ももりと氏の活動や、創作に注目したい。そう切に感じたひと時だった。

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