いまや埼玉の音楽拠点となり、ジャンル問わず個性的なアーティスト達が集結するライブハウス北浦和KYARA。その2Fに多様な人間が出入りするダイニングレストランがある。
ザーゴンキッチンだ。
その自由で居心地の良い空間は、北浦和という街が醸し出す雰囲気、マスターであるザーゴン氏のパーソナリティーが創り上げているように思える。
今回は楽しく自由に生きて働くザーゴン氏に、「ザーゴンキッチン」の事はもちろん、自身のバンド、運営するレーベルの今後についてまで、幅広く語ってもらった。
自分がマイペースでいられる場所
『ザーゴンキッチン』
ずっと「気をつけ」をしていられないし、そういう店は嫌
『ザーゴンキッチン』は、ある程度自分がマイペースに仕事できる雰囲気を作りたかったんです。
根本的にちゃんと生きたくないというか、ちゃんとした人間像だったり、しっかりとした大人というのを持っていたくないんですw
ずっと「気をつけ」をしてられないし、そういう店は嫌だって思っていて。
きっちりするところはするけど、通常営業してても盛り上がって来たらお客さんと共にカウンターに座って飲んじゃうスタイルです。
長く続けるんだったらそういうアットホームな雰囲気のお店じゃないと無理かなと思って、今の店の形に落ち着きました。
北浦和っていう土地柄は、様々な人達を取り込んでいかないと飲食店として成立しないんですよね。
ライブハウスと一体型の飲食店だとは云え、バンドマンが毎日この街に沢山いるわけじゃないので、メニューのネーミングはおじいちゃんもおばあちゃんも子供にもわかるようにしています。写真とメニューを見ただけで、ある程度味の想像がつくように心掛けています。
だからメニュー見たら全然お洒落じゃないですよw
あとはライブのついでで、ご飯を済ませられるように、食べるか飲むかのメニューにしてます。
例えばアラカルト系だったらお酒にチーズみたいな。食事だったらある程度安くてボリューム出せるものにしたりとか。気を使ってるのはそれくらいですかね。
料理は作るよりも食べている人を見るのが好き
料理を作ることに関しては、本当に”仕事“って凄く割り切ってます。
元々仕事は仕事って凄く割り切るタイプなんですよ。だから嫌なことでも仕事となれば出来て、それが徐々に嫌じゃなくなって、ハマって、意外とどうやら出来るっぽい、という周りの反応です。
あとは人が食べているのを見るのが、若干のそのセクシャル的な部分で好きな感じはあります。作っているのが好きって言うよりかは食べてる人を見てるのが面白いなって感じ。
エンドユーザーの顔が見える仕事は飽きがこない
元々は大学時代に丸3~4年、大宮のダイニングバーでずっとバイトをしてたんです。もう潰れちゃったお店なんですけど、当時同世代のバンドマンのたまり場みたいにな感じで、凄い居心地がよかった。
実は『ザーゴンキッチン』は僕にとっては2店舗目なんですよね。大学を卒業するタイミングで、オーナーさんに「店やりたいけど、料理ができないから料理やって欲しい」と引き抜きがあったんです。それが最初に自分でお店をやるきっかけになりました。
その後、飲食以外の世界を知りたいなと思って、一度お店を辞めて、友人と全く畑違いの広告代理店を起業しましたw
広告の業界は、興味あってもなくても様々な情報が入って来るんですよね。それこそ音楽のことに興味あれば、マーケットの動きがある程度見えてきたりとかっていうのが、始めた当初は面白かったですね。
でも結局最終的なエンドユーザーの顔が見えない仕事に飽きてきてしまって。今度どうしようか考えていた時にタイミングよく、今のお店と併設しているライブハウスであるKYARA(キャラ)が移転すると話があって。
「一緒に何かやるなら飲食かな」と口だけ出してたんですけど、社長からやって欲しいと言われて、「じゃあ仕事辞めてこっちきます!」となりました。
バンド・レーベル・イベント
遊びも仕事もごっちゃにしていきたい
ギターってめんどくせぇ…じゃあボーカルで
ギターを始めたきっかけはhideでした。X Japanのライブ映像を観て、かっこいいなと思って、中学1年の時にギターを買いました。
初ライブは中学生の文化祭でやったバンドです。ブルーハーツの「リンダリンダ」を演奏したんですけど、その時高揚感でアドレナリンが出まくって、そこから「バンドいいな」って思ってハマっていった感じですね。
高校で本格的にバンドを始めて、最初はギター・ボーカルだったんですけど、「ギターめんどくせえな」となって、ピンボーカルになりました。
入口は当時流行っていたV系だったんですけど、山嵐のCDをジャケ買いしてからインディーズシーンに興味が向かいました。メロコアよりは日本人的な歌謡曲調なロックが好きでしたね。
特にビビビッときたのはBRAHMANとかゴイステ(GOING STEADY)とか。あとはHAWAIIAN6が出てきた時は衝撃を受けましたね。メロコアなのに、なんて日本人的なんだと思って。
2つのバンドをやるのに、大変なことは何もない
今は「Zagon with BRINGING BAND」と「KBC」っていう2つのバンドをやっています。
Zagon with BRINGING BANDではメインボーカルで、KBCはベースボーカルが別にいて、自分はラップとスクリーモのツインボーカルスタイルです。
ステージ上に線がないっていうコンセプトで、全員ワイヤレスのアン直で、ステージ上にラインが一本もないんです。モニターも大体4台あるんですけど、2台はステージ袖にはけさせてステージを広くします。みんなぐちゃぐちゃなって、動かないのはドラムだけっていう。
メンバーみんながストーリー・オブ・ザ・イヤーが大好きで、こんなライブパフォーマンスがしたいというところから始まりました。結成した時には、とりあえずワイヤレスが無いとメンバーになれませんみたいな(笑)。
両方とも全部自分でプロデュースしているので、自分のスケジュールありきでバンドのスケジュールが組めるから、大変だと思うことは何もありません。
2つのバンドをやっていることで、こっちがちょっとつまらないなと思うと、こっちが面白いなとなって、バンドの中で気分転換出来るのがいいなと思います。
Zagon with BRINGING BANDはちょっとゆるめのクラブ寄りの曲で、自分は動く必要ないので、動かないライブはそんなに大変ではないです。
それに対してKBCのライブは、ライブってこんなに疲れるんだってなって。bpmも60くらい変わってくるので、舌が回らないっていうのもあります。
昔はバンドでライブを月8本とか10本とかやって、頭では良いショーを見せなきゃって思っていて、それはプロを目指してたら当然そうなんですけど、自分にはちょっと性に合ってなかったかなって思います。
今はライブの本数も少ないし、1日をフルに楽しみます。入りからもうお酒飲み始めて、ライブの時には出来上がっていて、ライブ終わったらもうグデングデンになって、それが楽しくて。ストレス発散にもなってました。
自分はずっとそのスタンスでやってたんですけど、この歳になってくると当時はガッチガチでバンド活動してた人たちもちょっと落ち着くじゃないですか。
で、自分たちが楽しいパーティーをやり続けてるから、当時のガッツリやってた頃にはそんなに声掛けてこなかった人たちも徐々に落ち着いてきて、「一緒に遊ぼうぜ」ってノリでばんばん誘うようになりました。
気がつけば26,7歳の時よりも同世代でのイベントを組みやすくなってきて、更に凄く楽しくなってきたなと思いますね。
「自分自身をプロデュースしちゃおうぜw」がきっかけ
今年から「OchaliceRecords」というレーベルを始めました。Chaliceは聖杯という意味があります。あとお茶が好きなので。
今までは「みんな友達」みたいな、本当に楽しいコミュニティしか築いてこれなかったんです。
でも人に評価を受けなきゃいけないことをやっているっていうことを忘れて遊び続けた結果、誰からも評価を受けられず、でも自分は別にダサいことやってないつもりなのになって思ってたんですけど。
それなら「自分自身をプロディースしちゃおうぜ」という感じでレーベルを始めました。
代理店時代に広告もやっていたので、web関係とかサイトの管理とかも自分で出来てしまうし、あとはプロモーションうまく噛み合えばそれなりにはいくのかなとは思いました。
無理なくミニマムるというか、1万人を熱狂させるというよりは、300人がコンスタントに楽しんでもらえるパーティーを継続していける「Ochalice Party」というものを提案しています。
「楽しいパーティーをみんなでしてこうよ」のノリをやってるレーベル、まあ、サークルをやりたいなと思っています。
自分のノウハウがどこまで通用するか、音楽業界で試してみたい
単純に現在の全体的な日本の物価と比べてCDって明らかに高いので、でもその価格を下げられないのも勿論わかるし、全部分かった上で、今の時代の単価に合ってないというのは、正直ビジネスマンとして音楽の考えとしてどうなんだって思っています。
だったら本当に求めてる人に対してその質のものを提供する。それはもっと高くてもいいと思うんですよね。
1万円2万円出してでも欲しいという人たちに対しては、最高のものを提供できます。
でも「YouTubeとかの音質で全然満足」という、もうお金を払うつもりのないユーザーに対しては、お金を払わないコンテンツをレーベルが提供しないと、時代の波には乗っていけないのかなと。
それをYouTube等で媒介すると、結局誰がお客さんなのかがわからないので、レーベルのサイト内で音源を無料でダウンロード出来るようにしています。
そのかわりメールアドレスだけ頂くようにして、ライブの情報やリリースの情報をメルマガとして流します。そうするとその人に対してプロモーション費用0で広告が撒けるんです。
そしてその1000人の中から100人がCDを買ってくれたらPayできるんですね。100枚売れた時点でそのCDにかかった費用は回収出来るので、それを単純に倍々ゲームで大きくしていくだけです。
だから別に今ある大きな市場に擦り寄らなくても、自分たちの音楽シーンは出来るんです。
音源はオケだけライブレコーディングをパラで録ってもらって、それに歌を録り直しているので、レコーディング代が掛かっていないんです。
それこそある程度のものしかできないんですけど、エンジニアのミックス力でなんとか形にして、それを無料ダウンロードにします。
そのサイト内で、「音源にしますけどいる人います?誰もいらないんだったら作らないし、欲しいならレコーディング代カンパしてください。あなた用のCD作るんで。受注生産するんで活動支援してください。」という、クラウドファンディングのような形にしようかと考えています。
それでが共感して同意してくれる人がいるなら、賄えるんじゃないかなと思って。
だから、凄い試験的ですね。とても。
あと思いっきりビジネスに振り切った時に、自分のノウハウがどこまで音楽業界に通用するのかは試してみたいですね。
『仕事も遊びのように公私混同して楽しみたい』
ただただ楽しいことを追い求め続けていたら、いつの間にかどんな環境下でも楽しめる方法が勝手に身につけたと語るザーゴン氏。
同氏にとっては「仕事=遊び」なのだろう。
飲食店・バンド・レーベル運営と3足の草鞋を履いている大変さや苦悩は微塵も感じられなかった。
「ザーゴンキッチン」を拠点とし、北浦和に何を仕掛けてくれるのか?
仕事も遊びも公私混同するスタイルを軸に、どんな”新しい遊び”を形作ってくれるのか今後注目していきたい。
- INFORMATION
Zagon Kitchen KYARA Official website
Accese:〒330-0074 埼玉県さいたま市浦和区北浦和3丁目1-6
TEL:048-711-7829
営業時間:11:30〜Last(無休)