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PAとして音楽業界に物申す 新宿ANTIKNOCK PA AZE氏

MUSIC

2018.8.20

昨今軒並み都内のライブハウスが閉店している中、今年で33年周年を迎える老舗のライブハウス『新宿ANTIKNOCK』が熱い。

ここから巣立っていたメジャーアーティストも数知れず。幅広いジャンルのバンド達から指示を得ているハコだ。

そんなバンドマンには登竜門とも言えようライブハウスで、PAとして活躍しているAZE氏に自身のPAとしての軌跡、独自の視点から捉えている音楽業界について熱く語ってもらった。

PAという仕事とは

っていうか「空気大事にしろよ。」だよね

まず最初に当たり前の事なんだけど、扱ってるのは俺の音じゃないじゃんっていう大前提(笑)

勿論スピーカーから音を出すのは俺なんだけど、そこから出る音っていうのはアーティストのものであって。更にそれを聴くのはリスナーだからね。音をね、私物化しちゃいけないと思ってんだよね。

そんなつもりはなくてもPAってフィルターが噛んでるだけで既に色がついちゃってんの。それを勘違いしてんじゃね?って思う瞬間が多い。だから俺は、自分なりの仕事のやり方はあるけど、自分の音っていう固定されたイメージはもたない様にしてる。

例えば録音の現場はわかりやすいよ。音って目に見えないから、良いじゃんって言われたら良く感じてこない?

だから良い雰囲気で良く聴こえるなら、良い雰囲気でやりゃあ良いじゃんっていう。結果気持ちが前を向けばいいテイクも録れるし時間も短くなるし、よりクリエイティブになれると思うのよね。だから一番重要で大切にしてるのは雰囲気作り。全て人間がする事だから。

現場の空気壊す管理職の人とかたまにいるんだけど、もう最低だよホント(笑)

音を創るとは『平均化』=0に戻す作業

例えば、歌モノの曲に対して、ドラムがすげーイケイケな奴で、歌モノだけどドラムセットをしばきまくるとして、それを歌モノらしくまとめたい時ね。

しばきにくるのがプラス側にいっちゃってるわけでしょ?これをマイナスにもっていってゼロにもっていくのよ。

「もうちょっとここしっかりプレーしてよ」ってところがマイナスなわけじゃん。このマイナスをしっかりプレーして聴こえるように、プラスに錯覚させるとか。

敢えて何かを足すとかではなくて、平均化するっていう感じ。さっき拘りがないって話した理由も、色は勝手に出ると思ってるのね。こっちが無理に、勝手に色をつけなくても、もう皆色って持ってるから。

アーティスト側がそういうのが好きだから、そういう音が来るわけで。だからとりあえず、それをそのまま出してみたい。

それをそのまま出してみた時に、どのように聴こえるかだから、それがそのまま同じ印象になるように音を処理していくっていう。且つ曲を追った時に「この感じなら、もっとこういう風に聴きたいよね」とかにもっていく。

だから、それらしくなるようにもっていくっていうこと。

「俺の音は」とか「俺のやり方は」とかいうようなPAは消えてくんないかな(笑)

出す音なんか好みも人それぞれで、上手い人も下手な人も沢山いるわけ。

俺はこの業界入って10年、PAは4年くらいなんだけど、俺より長くやってる人で俺よりスキルない人って実際いるのね。

この世界は結局のところやっぱり技術。何をもってして技術と捉えるかも難しいところではあるけれど。

例えば、事務所やバンドの要望、機材や時間や場所、決められた条件の中で良いショーになるようにもっていかなきゃいけない。

一瞬一瞬を作り上げなきゃいけない時にミキサー卓の上だけで解決できるとはどうしても思えない。アーティストもリスナーも人だから、つまみだけじゃ良いショーに繋がらないと思ってる。だから、必要なのは技術を利用した対応能力じゃないかと。

「俺の音は」とか「俺のやり方は」とかいうようなPAにだけにはなりたくないんだよね。

PAの世界から見えた今の音楽の世界

ライブハウスの現状はどうにかなんねえかな・・・

アングラな世界で「商業音楽に負けるわけねぇ」って言ってる人とかたまに見かけるけど、申し訳ないけど「いや負けてるよ」って思う時もある。今、担当してるバンドの1つに『ROACH』っていうバンドがいて、大きなステージの経験もある、ある程度名の通った彼らでさえも、蓋開けてみると結構マジで必死こいて頑張ってるのよ。

俺たちが仕事から帰ってきて、飲んで寝てる時でさえ彼らはやってるんだよね。1本ライブするのにPA呼んで、照明呼んで、楽器のテック、舞台監督呼んで、打ち合わせしてゲネプロまでするバンドだって沢山いる。ライブをやる場所や、そこに来るお客さん、どういうライブをしたいかを考えてセットリストも綿密に組まれていく。

全ては「自分達のライブに来てくれるお客さんの為」なんだよね。そこに集まる人の全員が納得してくれる努力を本気でしてる。

圧倒的に努力の量が桁違いなんだよね。勝ちたいんならばそれ相応の希望と夢を持って努力をしないといけないと俺は思う。

あ、誤解しないでもらいたいけど、俺はアンダーグランドが勝てないと思ってるわけではなくてむしろ一緒に勝ちたい側なの。

だからアンチノックで働いてるわけで、アングラを応援してるしもっと力になりたい。

それがライブハウスにいる時の自分の仕事だと思ってる。そしてね、ライブハウス側にも同じ事が言えると思うの。

「昔はもっとバンドで溢れてた」って皆言うけど、バンドはいるじゃん。いないって思ってるのは、過去しか見えてない人達だけなんだよ。周りを見ればちゃんといる。なんでバンドがいなくなったって感じるのか、てめーの胸に聞いて見ればいいのに(笑)

んで、ライブハウスで働いてる側の目線で言えば、ライブハウスも安売り合戦。どこかの箱が値段を下げたら皆そっちに行っちゃうから、ウチも下げましょうって。お金がかかってないから働く側にも返せない。金をかけたくないのもわかるけど「お金はかかるよ」って思うのね。だから「コストを減らす努力」も当然必要だけど、「お金を生む努力」も同じくらい必要なの。

目の前の売り上げしか見えてないから周りや「今」が見えなくなって、いつからか時代に取り残されていってる事に気がついてない。もっと皆で手を取り合って協力し合うべきだなと思う。自分の好きなシーンにはずっと残っていってほしいもんね。

ライブハウスを利用するアーティスト、イベンター、ライブハウスの人が皆でもっと一丸となって作っていかないといけない


最近有名なそれもライブハウスだと余裕でソールドアウトするようなバンドが、ライブハウスでライブする機会が増えてきてる様にも思えるのよ。そういう動きもライブハウス文化を盛り上げようとしてるのかな?って思う。

だとしたら、いや、だとしなくてもなんだけど、もっと現場にいる俺達が頑張らなきゃいけない事だよね。

もう時代は進んでるんだから、過去の価値観でものを見るんじゃなくて、今を見て、それぞれの価値をもっとちゃんと理解し合うべきだよね。

現場にしかない現実。

ライブハウスという新しい音が生まれる場所が、今後衰退していくのか、はたまたメジャーとの垣根を超えた何かになるのか。

彼が鳴らす警鐘はほんの一部かも知れないが、利用する側、働く側双方が共に考えなければならないことが大いにあるのではないだろうか。

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